人間老いるのは世界共通ですが、向き合い方や感じ方は日本人とドイツ人では国や文化の違いがあると、日独ハーフで日本在住28年のエッセイスト、サンドラ・ヘフェリンさんは言います。
たとえ豊かであっても、貯金がたっぷりあっても、「節約」に情熱を注ぐ――そんなドイツ人の「お金と老い支度」のリアルを、サンドラさんの著書『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)から、一部引用・再編集してご紹介します。
一般的なドイツ人は男性も女性も、仕事以外に「生きがい」を求める人が多数派です。現役時代から「趣味」と「友達」と「休暇」は欠かせないものです。
日本と比較した場合、残業をする人が少なく、ワークライフバランスが良いため、遊びや社交にプライベートの時間を多く使えます。
ドイツの法律で決まっている有給休暇の日数は、労働関係の継続が6ヵ月以上の場合、「週に5日働く人は年間20日」「週に6日働く人は年間24日」です。でも実際には多くの企業に勤続年数と関係なく、約30日の有給制度があります。病欠は有給とは別の扱いとなるため、まるまるリフレッシュのために使えるのです。
そういった背景もあり、ドイツ人にとって休暇(ウーアラオプ Urlaub)は「南国の島に行って思いっきり羽をのばせる時間」です。日本で言えば「いい歳をした大人」が目を輝かせて、「次の休暇はここに行こうと思う!」と嬉しそうに語り、友達夫婦と一緒に旅をしたりします。
年がら年中「休暇、休暇」(ウーアラオプ、ウーアラオプ)を連発しています。まるで夏休みが楽しみでたまらない小学生みたいで、なんだか、かわいいのです。
そして「ドイツ人」と切っても切り離せないのが「節約」です。
新聞も「もったいないから」8人で回し読み
バカンス中に財布の紐が緩むのは世界中どこも同じですが、その際もドイツ人は「趣味のような節約」をやめません。ある女性の話には、大いに笑わせてもらいました。
「スペインの南の島やクロアチアなど、ドイツ人観光客が多いエリアでは、『ビルト』(Bild-Zeitung)〔註:ドイツのタブロイド新聞〕が売られているの。先日、私はブルガリア旅行をして現地のビーチに遊びに行ったんだけど、そこにドイツ人のカップルが沢山いたのね。私が寝ころんでいた隣には4組のカップルの計8人がいたの。その人たち、現地で買った『ビルト』を『8人で回し読み』してたの。『おい、読み終わったら、早くこっちに寄こせ』とか言っているのを聞いてびっくりしたわ。遠出をして優雅にバカンスを楽しんでいるのだから、『ビルト』ぐらい人数分買えばいいのにねえ」
「節約、特に水や電気の節約に、ドイツの古い世代は本当にシビア。それは『実際にお金がかかっているかどうか』という現実的なことよりも『信念』に近いものじゃないかな」
こう語るのは、50代のドイツ人男性です。彼はオフィスをケルン市内に借りていますが、ここの大家さん(80代)の節約に関する徹底ぶりもなかなかのものだといいます。