世界最高峰の自動車レースであるF1®は、近年、これまでにない盛り上がりを見せている。
きっかけは2019年から配信が開始されたNetflixの「Formula 1:栄光のグランプリ」(英題「Formula 1:Drive to Survive」)だと言われている。
レースそのものよりもチームやドライバーの人間模様などにフォーカスしたこのドキュメンタリーシリーズは、従来のF1®のファンだけでなく、自動車レースに馴染みのない視聴者までを巻き込む1話完結の物語というかたちでつくられている。しかも世界配信のNetflixだ。現在は7シーズン目の70話まで配信されているが、多くの国でF1®のファンを開拓したことは想像に難くない。
なかでもアメリカでの人気の高まりが凄まじい。F1®を中継しているスポーツ専門チャンネル「ESPN」は、配信開始の2019年の1レースあたりの平均視聴者数が約67万人だったのが、3年後の2022年には約121万人と倍増している。
そもそもF1®はヨーロッパ発祥のため、アメリカではこれまでそれほど注目を集めていたとは言い難い。むしろF1®より国内中心で主に楕円形のコースで開催されるインディカー・シリーズなどが人気を得ていた。実際、1992年から1999年までの8年間と2008年から2011年までの4年間はアメリカでF1®のレースは行われていない。
実は、アメリカでのF1®人気の上昇に貢献しているのはNetflixだけではない。2017年にF1®の興行権を持つ「フォーミュラワン・グループ」をアメリカのマスメディア企業「リバティメディア」が買収したことが大きく影響している。フォーミュラワン・グループはヨーロッパの投資会社が大株主だったが、この買収でF1®開催の主導権がアメリカに渡ったかたちとなったのだ。
前出のNetflixのドキュメンタリー番組も、このリバティメディアがアメリカでのファン拡大のために仕掛けたとも言われ、F1®の開催自体も従来のアメリカGP(グランプリ)に加え、2022年からはマイアミGP、2023年からはラスベガスGP が加わるなど、現在は異例の1国3開催となっている。このうちラスベガスGPに関してはリバティメディアが自ら主催者ともなっている。
この沸騰するF1®人気を背景に、ブームをさらに加速させる作品として公開されたのが、映画「F1®/エフワン」だ。