暗号資産

2025.06.03 09:00

ビットコインは量子コンピューターで崩壊する、専門家の不気味な警告

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米グーグルの量子コンピューターの研究チームは5月22日、広く使われているRSA暗号の解読に必要な量子ビットの数を大幅に削減する新たな手法を発表した。この研究は、ビットコインなど暗号資産のセキュリティが、以前に考えられていたよりも短期間で量子コンピューターを用いて破られる可能性を示唆するものだ。

グーグルの研究者クレイグ・ギドニーは、「RSA暗号(2048ビット)を解読するために必要な量子のリソースが、これまで考えられていたものの約20分の1で済む可能性がある」と述べて、ビットコインに使用されているものと類似した公開鍵暗号アルゴリズムを破るために必要な量子ビットの数に言及した。

量子コンピューター技術の急激な進化

ビットコインはRSAではなく、楕円曲線暗号(ECC)を使用しているため、この研究は直接的にビットコインに脅威を及ぼすものではない。しかし量子コンピューター技術の急激な進化を踏まえると、楽観できない状況にある。

ビットコインの著名な支持者のひとりで、価格が100ドル(約1万4200円。1ドル=142円換算)だった頃から保有していたと主張する投資家チャマス・パリハピティヤは、この論文に反応してX(旧ツイッター)に次のように投稿した。「もしこれが少しでも真実であれば、今起きている他のすべてのことと相まって、安全な投資対象はハードアセット、つまり、あえていえば金(ゴールド)だけということになる」。

米資産運用大手のブラックロックは、これに先立つ5月9日に、自社が運営するビットコイン現物上場投資信託(ETF)のリスク要因の一覧に、量子コンピューターに関する警告をひっそりと追加していた。

運用資産が約10兆ドル(約1420兆円)とされるブラックロックは、2023年にウォール街が待ち望んでいたビットコインETFを市場に投入するための運動を主導し、2024年1月に複数のIBITと呼ばれるファンドをデビューさせた。

現在同社ファンドは、発行上限が2100万BTCに制限されたビットコイン全体の約3%にあたる700億ドル(約9.9兆円)相当のビットコインを保有しており、一部にはこれがブラックロックによるネットワークの過度な支配を招くと警鐘を鳴らす声もある。

「量子コンピューター技術が進歩すれば、世界の情報技術インフラで使われている多くの暗号アルゴリズムの有効性が損なわれる危険がある。そこには、ビットコインのようなデジタル資産に使われている暗号アルゴリズムも含まれる」と、ブラックロックが9日に修正を加えたビットコインのファンドに関する規制当局向け文書に記されている

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編集=上田裕資

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