電波天文学は長い間、脚光を浴びることもなく、業績が過小評価されている感がある。その主な理由は、大型の光学望遠鏡にとってはお決まりの、視覚に訴えかけるような画像を生み出すことができないからだ。だが、総工費10億ユーロ(約1700億円)の1平方キロメートル電波干渉計(SKA)天文台が2027年にオーストラリア西部と南アフリカで稼働を開始すれば、こうした状況は完全に変わるかもしれない。
SKA天文台に対する資金提供の主な目的は、暗黒エネルギーや宇宙時間にわたる銀河進化に関する謎を解明すること、そしてアインシュタインの相対性理論にさらなる制約を課すことだ。だが、オランダを拠点とし、同国の培った低周波電波スペクトルのノウハウを用いて、遠方にある地球型の太陽系外惑星から放射される電波を探そうとしている電波天文学者が少なくとも1人いる。
この電波は100メガヘルツ(MHz)前後の非常に微弱な信号になるため、低周波SKA(SKA-Low)望遠鏡で得られる限りの感度が必要になると、オランダ電波天文学研究所(ASTRON)のSKAサイエンスグループを率いるジョー・カリンガムは、アムステルダム大学にある自身の研究室で応じた取材で語った。
この周波数帯は、カーラジオのFMダイヤルで使われているのと基本的に同じだ。
ノルウェーや南極にオーロラ探しに行くのなら、太陽からのエネルギー放射、できればコロナ質量放出(CME)が起きてほしいと考えるだろう。CMEが地球大気に衝突し、大規模で美しい発光現象を引き起こすからだとカリンガムは話す。だが、電波受信器に目を向けたなら、オーロラは低周波スペクトルでも非常に明るいことがわかるだろう。
地球の磁場はまるで盾のように、太陽活動から人類を守っているため、惑星磁場を持つことが、生命生存可能性にとって極めて重要だと考えていると、カリンガムは説明する。
たとえ天文学者が太陽系近傍の赤色矮星のハビタブルゾーン(生命生存可能領域)内にある地球に似た惑星を見つけたとしても、もし惑星磁場がなければ、M型赤色矮星からのCMEに日々晒されることになる。
すなわちそれは、ハビタブルゾーン内にある不毛の岩石惑星である可能性が最も高いと、カリンガムは指摘する。なぜなら磁場がなければ、惑星はやがて大気を失い、海が蒸発してしまうからだという。従って、磁場はこの問題における不可欠な要素であり、電波はその磁場を検出して測定するための唯一の現実的な手段だと、カリンガムは続けた。