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2025.05.16 10:15

「30年に一度の大チャンス」海外投資家が語る、日本市場の真の可能性

米運用会社GMOで日本株投資を指揮するドリュー・エドワーズ氏(右)と著者(左) Courtesy of the Author

米運用会社GMOで日本株投資を指揮するドリュー・エドワーズ氏(右)と著者(左) Courtesy of the Author

「日本でこれほど『アニマルスピリッツ』が感じられるのは、1991年に私が初めて日本に来て以来、初めてのことです」

そう語るのは、米国の運用会社GMO(Grantham, Mayo, Van Otterloo & Co.)で日本株投資を指揮するドリュー・エドワーズ氏。長年、日本市場に深く関わってきたからこそ見える本質的な変化、そして海外から見た「今の日本」について、じっくりと話を伺った。

「いまの日本には、これまで見たことのない前向きなエネルギーがある」

吉川絵美(以下、吉川): 日本経済は過去30年、大きな試練の中にありましたが、現時点での日本経済をどう見ていますか?

ドリュー・エドワーズ(以下、ドリュー): 私は非常に楽観的に見ています。1991年に日本に来た当時と比べて、企業経営者の意識も、政策環境も、社会全体の空気も大きく変わってきました。30年間の痛みを伴う改革を経て、ようやく実を結び始めている。その意味で、本当に面白いタイミングにきていると思っています。

吉川:具体的には、どういった点が変化していると感じていますか?

ドリュー:従来の「コストカット一辺倒」ではなく、トップラインの成長を志向する経営が目立つようになりました。リストラクチャリングやスリム化だけでなく、価値創造に向けた積極的な動きが出てきています。

その一環として、経営者がようやく価格を上げる決断をし始めています。これは大きな変化です。これまで、多くのCEOは自社製品やサービスの価格を上げることを恐れていました。しかし最近では「やってみたら受け入れられた」「お客様が理解してくれた」という成功体験が生まれてきている。これは彼らにとって非常にポジティブなフィードバックです。

社会面でも大きな変化が見られます。若者たちの間では、安定志向から挑戦志向へのマインドセット転換が進み、スタートアップ起業への関心が高まっています。女性やシニア層の労働市場への参加、外国人労働者受け入れの加速など、日本社会全体が静かに、しかし着実に変化を遂げています。

吉川:海外投資家の中には、いまだに日本に対して懐疑的な見方をもつ人も多いようです。

ドリュー:そうですね。たしかに、いまでも「また期待外れに終わるのでは」と言う人はいます。でも、そう言っている人の多くは、30年前から現地に来ておらず、企業との対話もしていない人たちです。彼らはもはや現実を見ていない。実際に日本に来て、企業経営者と膝詰めで話をしている投資家たちは、明確に違う感触をもっています。経営者たちは、時に試行錯誤しながらも、間違いなく前進しようと努力しています。日本企業の意識は確実に変わりつつあります。

吉川:そもそもドリューさんはどのような経緯で日本と関わることになったのですか?

ドリュー:1980年代、日本経済が世界を席巻していた時代に興味をもちました。当時のアメリカは、日本製品に対する反発も強かったのですが、私は逆に「なぜこんなに成功しているのか」を知りたくなりました。高校卒業後、上智大学に留学し、卒業後、ファイザー日本法人に入社しました。その中でM&Aプロジェクトを通じて、日本企業の独特な企業文化やガバナンスに直に触れ合うことができたのは、貴重な経験でした。その後、米国でビジネススクールとロースクールを経て、リーマン・ブラザーズに入社し、その後、西海岸の運用会社で日本株投資を始めました。そこから、複数の運用会社を経て、現在はボストンに本拠を置く運用会社GMOで日本株投資の責任者を務めています。

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文 = 吉川絵美

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