北米

2025.06.05 12:30

トランプの大型法案に「共和党で造反者」続出、AI規制巡る反発も

2025年6月4日、ホワイトハウスで「サマー・ソワレ」を開催したトランプ大統領(Photo by Anna Moneymaker/Getty Images)

2025年6月4日、ホワイトハウスで「サマー・ソワレ」を開催したトランプ大統領(Photo by Anna Moneymaker/Getty Images)

トランプ米大統領は、先月議会の下院を通過した自身が推進する大型の税制・歳出法案の修正案を、上院でも可決させたい考えだ。しかし、一部の共和党議員は、この法案に自身が望まない条項が含まれていたことを理由に、反対票を投じると脅しており、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル (大きく美しい法案)」と呼ばれるこの法案の先行きが疑問視されている。

州レベルの人工知能(AI)の規制を10年間禁止する条項

共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は6月3日、この法案に州レベルの人工知能(AI)の規制を10年間禁止する条項が盛り込まれていることを指摘して、「私は、このことを知っていたらこの法案に賛成票を投じていなかった」と述べた。彼女は自身のX(旧ツイッター)の投稿で、「私はこの措置に断固反対する。これは州の権限に対する侵害だ」と主張した。

同議員は、上院がこのAI規制の条項を取り除かない限り、この法案に再び賛成することはないと述べている。一方、この条項を支持する共和党下院議員のジェイ・オバーノルテは、この条項が国家レベルにおけるAI規制の整備を連邦議会に促すためのものであり、「州ごとに異なるルールの寄せ集めではAI開発が妨げられる」と主張している。

裁判所が法的命令に背いた者に法定侮辱罪を適用するのを難しくさせる条項

また、ネブラスカ州選出の共和党下院議員のマイク・フラッドも、先週の会合でこの法案に「裁判所が法的命令に背いた者に法定侮辱罪を適用するのを難しくさせる条項」が含まれていたことを知らなかったと述べて、「もし知っていれば私はこの法案に投票しなかった」と述べていた。

この条項は、政府の違法行為に対抗するために仮差し止め命令などを求める市民団体や個人に、保証金の前払いを義務づける形になっており、専門家は「訴訟のハードルを大きく引き上げる」と警告している。この条項の支持者は、「無責任な訴訟を防ぐのが目的だ」と主張しているが、反対派は、トランプやその関係者が裁判所命令に違反した場合の保護策だと非難していると、ニューヨーク・タイムズは報じている。

イーロン・マスク、「利権まみれのおぞましい悪法だ」と酷評

イーロン・マスクもここ数日でこの法案に強く反対しており、Xに十数件の投稿を連投して、「巨大で、法外で、利権まみれのおぞましい悪法だ」と酷評している。また、法案に賛成した共和党議員らに対して、来年の中間選挙で有権者が彼らを落選させることになると脅している。

下院に「差し戻し」の見方

トランプは、この法案を7月4日までに成立させようとしているが、上院で大幅な修正が加えられる見通しで、再び下院に差し戻されると見られている。また、ランド・ポール議員など複数の共和党上院議員が、この法案が財政赤字の拡大につながるとの懸念を表明しており、低所得者向け医療制度(メディケイド)の削減に懸念を示す議員もいる。また、この法案は、民主党議員が全員反対票を投じた場合、可決のためには共和党内の造反を最大3人に抑える必要がある。

下院は5月22日に、賛成215票、反対214票というわずか1票差でこの法案を可決していた。共和党からはふたりが反対票を投じ、他に3人が棄権票を投じた。トランプは、共和党内の造反議員を個別に説得して賛成票を取り付けていた。この法案には、チップや残業代への課税撤廃や、2017年の減税措置の延長、国境警備予算の増額などトランプが大統領選で掲げた公約の一部が盛り込まれている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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