気候・環境

2025.05.20 15:15

地球生命誕生の秘密は太古、「毎世紀1.8ミリ秒」のある変化にあった

Getty Images

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40億年以上にわたって地球の回転はそのスピードを少しずつ緩めてきた。主に月の重力の影響で、地球の自転は1世紀ごとに約1.8ミリ秒ずつ遅くなっている(1日が1世紀ごとに約1.8ミリ秒ずつ長くなっている)。

2021年の研究では、「日が長くなること」と「大気中に酸素が増えたこと」には関連があるとされている。酸素が地球の大気に本格的に現れたのは、少なくとも2回の大きな出来事の波として知られている。

1回目は約24億年前のいわば「大酸化イベント」とも名づけられる時期で、シアノバクテリア(「藍藻」と呼ばれる微小な藻類)が、大気の組成をさま変わりさせるほど大量の酸素を光合成によって作り出した。2回目はその数億年後に起きた「新原生代酸化イベント」だ。

しかし、酸素の大量発生はなぜそのタイミングで起こったのか? 科学者らは、何が引き金となったのかについて長く議論を重ねてきた。

「地球の自転」と関係が?

実は、その手がかりは地球の自転にあるかもしれないようだ。

地球の自転が遅くなることで1日の時間は長くなり、シアノバクテリアのような光合成をする生物にとっては、日光を浴びる時間が長くなる。

ミシガン州のヒューロン湖の湖底にある「シンクホール」では、今でも古代のシアノバクテリアに似た微生物マットが観察されている。夜間は、硫黄を代謝する微生物がマットの表面に上がってくる。朝になるとそれらは退き、代わりに酸素を出すシアノバクテリアが表面に出てくる。だがこのシアノバクテリアは光合成を始めるのに数時間もかかるのだ。

日々の微生物の入れ替わりが示しているのは、極めて重要なダイナミズムだ。つまり、1日が長くなればなるほど、シアノバクテリアが光合成を行い酸素を生み出す時間も増える。海洋学者ブライアン・アービックと地球微生物学者ジュディス・クラットは、地球の1日が徐々に長くなることで、過去の微生物たちがより多くの酸素を作れるようになり、それが大気の変化を引き起こしたのではないかと考えた。

この仮説を検証するため、研究チームはフィールド実験とラボでのシミュレーションを行い、さらにその結果をコンピューターモデルと照合した。その結果は明確だった。地質時代を通じて日が長くなると、それに比例して酸素の蓄積可能性も高まっていた。海洋科学者アルジュン・チェンヌによると、一見、日照12時間の日2日分と日照24時間の1日は日照量としては同じに思えるが、酸素の拡散速度の違いがその対称性を崩すという。微生物マットからの酸素放出は非常に遅く、長い日照時間がないと酸素は大気中に十分に蓄積されないのだ。

このように、日照と酸素拡散のわずかなズレが、まさにその時期に酸素濃度が上がった理由である可能性がある。研究チームは、このメカニズムが地球史上の2度の主要な酸化イベントの両方に関係していると考えている。

チェンヌの言葉を借りれば、今回の研究は「微生物マットの中の分子のダンスと、地球と月のダンスとを結びつける」ものだ。つまりは、地球の回転が徐々に遅くなっていったことは、潮の満ち引きやカレンダーに影響を与えただけではなく、まさに生命を形作ったことになる。

(本稿は英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」の4月29日の記事から翻訳転載したものである)

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