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2025.07.14 11:00

米アバクロの富豪87歳が、AI企業に投資して「3カ月で3000億円」も稼いだ理由

レス・ウェクスナー(Photo by Astrid Stawiarz/Getty Images for Fragrance Foundation)

レス・ウェクスナー(Photo by Astrid Stawiarz/Getty Images for Fragrance Foundation)

アバクロンビー&フィッチやザ・リミテッドなどのブランドを世に送り出した米オハイオ州の小売業界の帝王、レス・ウェクスナーは、人工知能(AI)ブームの中で最も意外な勝者の一人となった。

オハイオ州でかつて最も尊敬を集めた起業家の一人とされたウェクスナーは、今から5年前、有罪判決を受けた性犯罪者のジェフリー・エプスタインと親しい間柄だったと報じられ、アパレル大手Lブランズの会長を退任し、ヴィクトリアズ・シークレットの親会社の自身の持ち株を売却し始めた。当時82歳だったウェクスナーについて多くの人は、引退してオハイオ州ニューアルバニーにある約138万平方メートルの私有地で静かに暮らすと考えていた。

しかし、アパレル業界の富豪である彼は、それ以降にテクノロジー業界への巧みな投資によって、資産を倍増させることに成功した。フォーブスの推計によると、過去3カ月間でウェクスナーの保有資産は、79億(約1兆1600億円)ドルから101億ドル(約1兆4900億円)へと約20億ドルも急増した。これは彼の子どもたちや妻のアビゲイル名義の資産を含めた金額だ。

その資産増加の最大の原動力となったのが、彼が保有する話題の人工知能企業「CoreWeave(コアウィーブ)」の4%の株式だ。7月7日、コアウィーブは暗号資産のマイニング企業「コア・サイエンティフィック」を約90億ドル(約1兆3300億円)相当の株式交換で買収すると発表した。コアウィーブの時価総額は、3月の新規株式公開(IPO)以降に約3倍に膨らんでおり、10日時点で730億ドル(約10兆800億円)近くに達していた。ウェクスナーが保有する同社株の評価額は約28億ドル(約4120億円)に上昇した。

フォーブスは以前に、ウェクスナーがいかにして2017年にニュージャージー州リビングストンで創業されたコアウィーブの株式を入手したかを報じていた。その背景には、当時ウェクスナーの資産を管理していたマネーマネージャーの巧みな判断があった。彼の4人の子ども(サラ、ハンナ、デイビッド、ハリー)を受益者とする信託は、2019年にコアウィーブへ100万ドル(約1億4700万円)を出資し、2021年のシリーズAラウンドでさらに60万ドル(約8830万円)を追加で投資した。そして同社が3月に上場した時点で、その信託が保有する株式の評価額はすでに7億3000万ドル(約1070億円)となっていた。

快進撃を続けるコアウィーブ

創業8年のコアウィーブは、企業のデータセンター構築を支援し、AIモデルの開発に必要なGPUへのアクセスをマイクロソフトやIBM、メタなどを含む顧客に提供している。顧客不足とは無縁の同社は、今年第1四半期に前年同期比420%増の9億8200万ドル(約1450億円)の売上高を記録していた。ただし黒字化には至っておらず、同四半期に3億1500万ドル(464億円)の純損失を計上した。

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編集=上田裕資

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