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2025.07.11 14:15

「2070年人口半減」データの衝撃が突きつける、自競ファースト「愚の骨頂」と「待ったなし」のスポーツ界生存戦略

imtmphoto / Shutterstock.com

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スポーツビジネスを手掛け20年以上。都度都度、競技団体から相談を受ける。担当者から頻繁に持ち込まれる相談は「競技人口の増加」だ。Jリーグが30周年を迎えれば「サッカーの競技人口を増やしたい」、ラグビー・ワールドカップ日本開催が成功裡に終われば「ラグビーの競技人口を…」、東京五輪で金メダル、ワールドベースボールクラシックで世界制覇を成し遂げれば「野球の…」とどの競技関係者も、アスリートも口々にする。いや、待って欲しい。各団体とも本当に自身が担当する競技人口だけが増えるものと信じているのだろうか。

厚生労働省は6月4日、2024年の日本人の人口動態統計を公表。これにより日本における24年の出生数は68万6061人となり統計がある1899年以降最少となった。4月に総務省が発表した統計では、総人口も14年連続で減少中だ。

1970年代、日本の出生数は200万人を超えていた。今日の50代前半の世代である。しかし1980年代には減少に転じ、2016年には昭和以降初めて100万人を割り込むと、22年には77万人台となり80万人を切った。この減少ペースは想定を上回っており、国立社会保障・人口問題研究所の推計より10年以上早く70万人台に突入している。数字だけ単純計算すると残り12年で日本人は生まれなくなる勢いだ。

日本は人類史上に例を見ない超少子化高齢社会に直面している。厚生労働省が発表した「令和5年版厚生労働白書」によれば、日本における2025年の19歳以下の人口は1907万人(推計)。各年代とも100万人と考えられるが、2040年には1547万人。だが年代が70万人と想定すると1330万人となる。一方で、65歳以上は3928万人。日本は今、確実に進行する国家的な危機に直面している。厚生労働省の人口推計は、日本の未来の姿を容赦なく映し出し、特にスポーツ界にとっては、その存立基盤を揺るがしかねない衝撃的な数字を突きつけている。

2070年、日本の総人口は現在の約1億2615万人から約3割減少し8700万人へ。さらに深刻なのは、将来のトップアスリート、そしてスポーツを愛好する次世代の源泉である「19歳以下」の若年層人口が、現在の約2074万人から約1099万人へと、実に47%も減少するという予測だ。これは、単純計算でスポーツの競技者予備軍が半減することを意味する。この「待ったなし」の現実に、日本のスポーツ界はどれほどの危機感を持ち、未来への舵を切ろうとしているのだろうか。ここでは、この最新の人口データを基に、競技人口減少という直接的な影響のみならず、指導者不足、施設維持困難、そしてスポーツ文化全体の衰退という複合的な危機を明らかにし、持続可能な未来を築くための戦略転換を迫る。

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