会話の際に相手の目を見る、あるいは逸らす。相手の印象はどう変わるのでしょうか。
静岡産業大学教授で延べ3000億を超える人間の行動パターンを分析してきた岩本武範氏は「目を見るだけでは印象をよくすることはできない」と解説します。岩本氏の著書『なぜ4人以上の場になると途端に会話が苦手になるのか』(サンマーク出版)から、一部引用・再編集してご紹介します。
「目を見て話す」神話は誤解
「話をするときは、ちゃんと相手の目を見て話しなさい」
あなたも何度かそう言われたことがあるのではないでしょうか。
ところが目を見るだけでは印象をよくすることはできません。反対に「感じ悪い!」と思われることも。
「じゃあ、話すときどこを見ればいいの?」と、戸惑ってしまうかもしれません。
でも、ご安心ください。
これを解決するヒントは、ジュースの「なっちゃん!」にあります。
「なっちゃん!」といえば、1998年に発売されて以来、長い人気を誇るロングセラー商品です。
もちろん飲めばおいしいことがわかるのですが、購入する前はほかのジュースとどれほど味に差があるのか、素人目ではわかりません。
ではなぜ、発売してすぐ爆発的なヒットを記録したのか、私の研究仲間の実験で、この点を説明する興味深い調査があります。
彼は、脳科学を駆使して消費者が反応しやすい商品パッケージをつくる専門家です。彼のチームがおこなった実験で、複数の商品パッケージを消費者に見せ、パッケージのどこに注目しているのかをリサーチした調査があります。
実験の結果、消費者は「人の顔」が描かれたパッケージや、人の顔に見える模様が入ったものに視線を向ける傾向が有意に強い、つまり「人間は『人の顔』に注目しやすい」ことがわかったのです。
「なっちゃん!」にも、シンボルマークともいえる「顔」がパッケージに大きく描かれていました。
この「顔」が、消費者の購買意欲をかきたてるのに一役買ったと考えられます。
人は文字には反応しづらく、顔など、自分と形状が似ているものに反応しやすいという性質があります。メールでも顔文字が入っていると読みやすかったり、相手の感情が見えやすかったりしますよね。
同じように、パッケージに人の顔がついている「なっちゃん!」を見ると、消費者の脳は反応しやすいため、あれだけ大ヒットしたのでしょう。