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2025.07.11 15:15

CBDグミ「THC混入」事件の本質──問われる業界の覚悟と自治のかたち

nang nang / Shutterstock.com

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こんにちは、ワンインチの柴田です。

福岡県内で販売されていたCBDグミから、法定基準値を大きく上回るTHC(テトラヒドロカンナビノール)が検出されるという事件が発生しました。

CBDは2023年の大麻取締法改正により合法と位置づけられた一方で、THCの残留基準は極めて厳格化されています。(THCの上限値は、「油脂及び粉末」で10ppm、「水溶液」で0.1ppm、「その他」は1ppm) 

その中で今回の件は、単なる“事故”では済まされない業界全体への警鐘ともいえる事案です。
今回は、この事件の背景や行政の対応、そしてCBDに関わる事業者が取るべきリスクマネジメントの姿勢について考えていきます。

自治体による買上調査──規制強化の新たなフェーズへ

今回新たにわかったことは、厚生労働省ではなく、福岡県独自の「買い上げ調査」によって明らかになった、ということです。

これまではCBD製品に関する市場監視は国レベルの対応が中心でしたが、今後は地方自治体も主体的に調査・監視を進める段階に入ったことを示しています。

今回の件では行政発表がなされ、調査の詳細が出てこなかったため、「県主導の調査から発見されたケースでは国がこれまでとってきた姿勢や対応が変わるのではないか」といった憶測がありました。

しかし、蓋を開けてみるとそのような国と自治体に認識の相違があるようには思えませんでした。むしろ、途中からは厚労省も捜査に加わり協力体制をもって慎重に捜査していたことが伺えます。

THC「数十倍」──偶然では済まされない濃度

報道によれば、福岡県の検査で検出されたTHC濃度は、基準値(1ppm)を「数十倍」上回るものであったようです。

上記にもある通り、CBD製品中のTHCの上限値は「油脂及び粉末」で10ppm、「水溶液」で0.1ppm、「その他」は1ppmです。

メーカー側がCBD製品を作ることが簡単ではないのはこの大変厳しいと思えるTHCの上限値を厳格に守れるのかというところにあります。

一度限度値を超えてしまうとそれは重大な問題となりうるので、製造する際にはメーカーも細心の注意を払って製造しているはずなのです。

しかし、今回の事件に関しては、上限値の数十倍のTHCが含まれていた。これが真実だとすると、常識から考えて、きちんと製造前に成分検査がなされ、CBD成分がTHCに変性してしまった、というにはかけ離れた数値であることは明らかだと考えます。

製造過程における管理体制や原料選定に重大な問題があったとしか思えません。

今回のように、行政が企業名を明示するかたちで発表を行う場合、「よほどのことがあった」と受け止めるべきです。

逆にいえば、通常の事業者は動じる必要はありません。適切な検査・管理を行っていれば、行政によって名指しされるような事態にはなりません。これから参入しようとしている事業者も、過剰にブレーキを踏む必要はないと私は考えています。むしろ、悪質なプレイヤーが排除されていくことで、市場は健全化に向かうはずです。

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文=柴田耕佑

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