昨今は、主要な科学的・技術的課題に取り組み、グーグルによるコンピューターサイエンスの基礎研究と応用研究をリードする部門としてもGoogle Researchは広く知られている。
グーグルの研究開発部門「Google Research」は社会を変え、人々の生活に貢献するテクノロジーを世に送り出すための機関として、1998年に設立された。2025年現在、組織の規模は1000人を超えるまでに大きくなっている。
Google Researchでプロダクト・ユーザーエクスペリエンス部門のバイスプレジデントを務めるカトリーヌ・チョウ氏に、これまでの歩みを聞いた。
Google Researchが実現してきた今と未来の技術革新
スタンフォード大学でコンピューターサイエンスと経済学を専攻したチョウ氏は、同大学の修士課程に在学中からグーグルとの共同研究のプロジェクトに参加してきた。グーグルによる深層学習モデルのTransformer理論を、ヘルスケア・テックの領域に応用した先駆者の一人でもある。現在もチョウ氏はグーグルのGeminiやOpen AIのChatGPTなどに使われている自然言語モデルを、医療の分野に応用するため情熱を注いでいる。
Google Researchによる研究開発の特徴は、成果となる技術により社会貢献を果たし、あるいは一般の人々の豊かな暮らしに寄与することを主眼に置いている点にある。特にヘルスケアや教育、地球環境といった技術領域において、その傾向は顕著だ。「ソーシャルイノベーション(社会課題の解決)を目的とする研究開発に最も興味を引かれる」と語るチョウ氏もその開発に深く関わる、医療向けの新しいオープンソースの大規模基盤モデルである「MedGemma(メドジェマ)」が良い例だ。

「画像診断、テキストベースの解析など、何年もかけてテクノロジーを臨床分野の意志決定領域にも通用させるために私も奮闘してきました。よく似た画像を参照して、自分の肌の症状が何らかの疾患であるかをAIが判定できる技術の開発などに携わっています」