2025年6月25日発売のForbes JAPAN8月号は「10代と問う『生きる』『働く』『学ぶ』」特集。創刊以来、初めて10代に向けた特集を企画した。背景にあるのは、10代をエンパワーメントしたいという思いと、次世代を担う10代とともに「未来社会」について問い直していくことの重要性だ。「トランプ2.0」時代へと移行した歴史的転換点でもある今、「私たちはどう生きるのか」「どのような経済社会をつくっていくのか」という問いについて、10代と新連結し、対話・議論しながら、「新しいビジョン」を立ち上げていければと考えている。
特集では、ドワンゴ顧問の川上量生、 軽井沢風越学園理事長の本城慎之介、 神山まるごと高専理事長の寺田親弘による表紙座談会をはじめ、世界を変える30歳未満30人に注目した「30 UNDER 30」特集との連動企画「15歳のころ」には、ちゃんみな、Shigekix、ヘラルボニー松田崇弥、文登、Floraアンナ・クレシェンコといった過去受賞者が登場。そのほか、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正、前台湾デジタル発展相大臣のオードリー・タンへの10代に向けたスペシャルインタビューも掲載している。
10代と問う「生きる」「働く」「学ぶ」特集の最後を飾るのは、スペシャルインタビューだ。日本を代表する経営者・柳井正が10代に向けて投げかける問いとは何か──。
2015年、ファーストリテイリングの会長・柳井正は、あることを始めた。公益財団法人柳井正財団を設立し、日本国籍をもった若者を米英の大学の学士課程に送り込むというものだ。学費だけでなく、寮費、保険、生活費を「返済不要」の奨学金として提供する。高い志や情熱をもった学生たちが、どんな人間に成長していくか。時間をかけた壮大な支援である。
この奨学金プログラムがスタートして今年で10年。昨年までに奨学生になったのは272人。進学先は、ハーバード、イェール、コロンビア、スタンフォード、オックスフォード、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンなど、世界トップクラスの約50の大学。応募した全学生に対して、柳井正が最終面接を行っている。
柳井が若者たちに伝えたいこととは何か。山口県の小さな衣料品店からユニクロでアパレル業界世界3位になった彼からのメッセージを聞いてみよう。
1.〈あなたは、「これが自分の人生です」と言えますか〉
財団をつくったきっかけは、日本はサラリーマンが増えたなと思ったからです。サラリーマンが増えること自体は別に悪いことではありませんが、違和感を覚える点があります。ユニクロは東南アジアにも多く出店していますが、東南アジアと比べると違いがあります。日本人の行動が受け身であるということです。
なぜだろうと思っていたら、財団をつくる際、有名高校の先生と話す機会がありその先生からこう言われました。
「日本の高校生は世界一です」と。
そして、先生はこう付け加えました。
「世界一の高校生たちは、大学1、2年目でダメになります。全員サラリーマン化してしまうのです」
先生が言うには、日本の大学の授業は教室で一方的に話を聞いて、学生たちは暗記して知識として吸収する。一方、アメリカでは教授も学生も対等に議論することができるけれど、日本の大学では「あなたはどう考えますか?」と聞かれることがないから、何も答えられない、と。こうして言われたことに従うだけの人間になっていき、どの企業に就職するかだけを考える、日本の大学は「サラリーマン予備校」だというのです。