パンダ不在でも継続 パンダの笹でアオリイカを育てる「パンダバンブープロジェクト」

プレスリリースより

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和歌山県白浜町の動物園アドベンチャーワールドは、パンダが食べ残した竹を束ねて海底に沈め、アオリイカの産卵床や小型生物の生育基盤にする活動を続けている。6月28日には4頭のパンダすべてが中国に帰ってしまうが、このプロジェクトは存続するということだ。

アドベンチャーワールドは、里山の放置竹林問題に対処すべく、2011年、大阪府岸和田市の竹を伐採してパンダの食事として利用するパートナーシップ協定を岸和田市と締結した。しかしパンダは新鮮な葉っぱしか食べないため、竹の多くは残ってしまう。そこで、余った竹をさまざまにアップサイクルする取り組み「パンダバンブープロジェクト」をスタートさせた。

海底に沈められたアオリイカ産卵床。
海底に沈められたアオリイカ産卵床。

2022年に開始された、竹を束ねて海中に沈めてアオリイカの産卵床にする取り組みもその一環。これまでに数多くの産卵床が設置され、2024年には、64基の産卵床でアオリイカの産卵が確認された。その一部は京都大学白浜水族館で展示され、2641匹のイカの赤ちゃんが生まれた。この赤ちゃんたちはその後、海に放流されている。そのほか数々の小型海洋生物や海藻の生育も竹の産卵床が助けてきた。

アオリイカの卵。
アオリイカの卵。

2025年には白浜伊古木漁港に30基、岸和田市内の漁港に新たに30基が設置される予定だ。また今年は初めての試みとして京都大学による環境DNA調査を行われる。採取した海水に含まれる生物のDNAを解析し、生物相の様子を観測するというものだ。

アオリイカの赤ちゃん。
アオリイカの赤ちゃん。

アドベンチャーワールドでは1994年からジャイアントパンダの飼育を行ってきた。現在までの約31年間の経済効果は、関西大学宮本勝浩名誉教授の報告によれば約1256億5741万円にものぼる。これは2023年の阪神タイガース優勝による経済効果(約782億9222万円)の約1.58倍ということだ。

アドベンチャーワールドからパンダがいなくなれば、その損失はいかばかりかと心配されるが、パンダバンブープロジェクトはパンダがいなくても続けられる。今後は、竹を活用した海の生態系回復の可能性を探究し、地域住民や漁協関係者と連携を深めて「里山と里海をつなぐ新たな環境保全モデルの確立を目指す」ということだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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