サイエンス

2025.05.17 17:00

1日100万羽以上の鳥を殺すオーストラリアのネコ、18世紀に持ち込まれる

Maren Winter / Shutterstock.com

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2019年春、ウエスタンオーストラリア州マンドゥラーにある保護区が、静かな生態系崩壊の舞台となった。絶滅の危機にあるヒメアジサシの巣作りが順調に進み、200羽以上が集まったところで、まずいことが起こったのだ。

朝に、ひな鳥が死んでいるのが見つかるようになり、そして成鳥が姿を消した。その後、すべてを説明する痕跡が見つかった。営巣地のあちらこちらで、砂にネコが残した跡、首のない死骸、ばらばらになった巣が見つかった。

去勢済みの首輪のない白いネコがたった1匹、営巣地に繰り返し侵入したことで、シーズンの終わりまでに、巣作りは完全に放棄された。

オーストラリアでは、1日に100万羽の鳥がネコに殺されている。この大陸の野生動物たちは、哺乳類の捕食者がいないかたちで進化してきたため、特有の弱さがある。結局、マンドゥラーのネコは安楽死に処せられたが、このネコがもたらした影響は、より大きな問題の存在を浮き彫りにしている。この問題は、驚くほど明確な起源を持つものなのだ。

オーストラリアへのネコの侵入は、最初の英国船の到着から始まった

最初のネコは、英国からの初の船団が船に乗せたものだ。船内のネズミの数を抑制するためだった。1788年、船がオーストラリアの海岸に着くと、ネコはすぐに2つめの仕事を得た。入植者たちにとって、害獣退治に便利な動物として歓迎されたのだ。農村で、最初はネズミの大発生に対応するため、後にウサギの激増に対処するため、土地と家屋に、数十年にわたって意図的にネコが放たれていった。

オーストラリアはその後も、生態系的な実験に次々と失敗してきた。例えばオオヒキガエルだ。クイーンズランド州のサトウキビ畑の甲虫を抑制するために1935年に導入されたが、意図されていた獲物を無視したばかりか、驚きのスピードで増殖して、土着の生態系を崩壊させた(オオヒキガエルは、自らを防御するため強い毒性を持つ)。オーストラリアは現在、誤った判断が残した負の遺産と戦っており、全国で駆除活動が実施されている。

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翻訳=緒方亮/ガリレオ

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