シンガポールから帰ってきてからしばらくたった時にふと気が付いたことがある。それは「おいくつですか?」と聞かれることが多いなということである。
考えてみれば、シンガポールや多国籍チームの中で仕事をするなかで年齢を聞かれたことはなかったが、日本では職場ではそこそこだが、飲み会の席になると必ずと言っていいほど質問される。
このことに興味を持って、年齢を聞いてくる人に理由を尋ねると、年功序列、上下関係を見極めるためなどであるという。考えてみると私も学生時代は上下関係を気にし、誰に敬語を使うかなど考えながら育ったので、年齢を聞くことが自然だったかもしれない。
年齢だけでなく、社歴、出身大学など、相手のことを知りたいがためにそうした質問がされるのは一般的ではあるが、私と同じように海外で働いたことのある人が帰国後、「日本文化」だと口を揃えていうことでもある。
では逆に、なぜ海外だと聞かれることが少ないのか? 実力主義、成果主義が中心の考え方の国では、年齢や社歴よりも優先される話題がある。大事なのは、その人がどんな人で、どんな経験をしてきて、何を考えているかということであり、年齢などのラベルを聞く文化にはなっていないということなのである。
これは、終身雇用があたりまえでなくなり、年功序列が薄れつつある今の日本で、リーダーがどんなカルチャーを作っていくかを考える上でとても重要になってくる。では、一人一人が意思を持ってキャリアを構築し、個が輝く働き方を促進する時代において、リーダーは何を変えていけばいいのだろうか?
相手の経験、好きなこと、考えていることを聞く
大事なのは相手の本質を知ることだ。その際に「何歳か」「何年働いているか」を聞くのはあまり意味がない。
それよりも、どんな経験をしてきて今ここにいるのか、なぜここで働き、今の仕事をしているのか。仕事は楽しんでいるか、どんな仕事が楽しいか、日々どんなことを考えているか、どんなことに喜びを感じているか。こんなことを聞いていくと相手のことがどんどん見えてくる。
いくつかの社会的集まりのなかでは、すでにこういうことを経験しているかもしれない。例えば、私の場合、パパ友の集まりではみんなの年齢は知らないし、気にもしていない。大事なのは同じ年齢の子供をもつ親であるということだけだからだ。そういう関係の中では年上だから気を使わなければならないということがない。ビジネスの世界でいう心理的安全性というものに似ている。