「リポビタン」シリーズをはじめ、疲労回復のための製品開発を長年続けてきた大正製薬が今、注目している疲れがある。それは、起床時に感じる疲れ「朝の持ち越し疲労」だ。同社マーケティング本部ブランドマネジメント1部飲料グループの梶浦雅史に、その経緯と狙いについて話を聞いた。
大正製薬のマーケティング本部ブランドマネジメント1部は、リポビタンの各種製品のブランド戦略を担う部署だ。
製品カテゴリーごとに2つのチームに分かれてはいるが、テレビCMなどでおなじみの「ファイトイッパーツ!」を合言葉に、イベントやキャンペーン展開の際には、カテゴリーを横断しワンチームで動くのが特徴だと、同部飲料グループの梶浦雅史は言う。

そして今、梶浦たちが挑戦しているのが「朝の持ち越し疲労」予防の取り組みだ。これはどういった疲労なのだろうか。梶浦が説明する。
「『朝の持ち越し疲労』とは、睡眠中の疲労回復が追いつかず、目覚めたときに疲れが残っている状態を指します。主な要因は、睡眠中のエネルギー供給不足や消費エネルギーの過多によって、十分な回復が行われないことにあります。大正製薬では、こうした状態を「朝の持ち越し疲労」と名づけ、改善策の提案を進めています」
では、なぜこの朝の持ち越し疲労に着目するに至ったのか。
起点となったのは、生活習慣やライフスタイルに起因するのではないかと仮説を立て実施した調査*だった。調査前から生活者へのヒアリングデータなどから、朝の疲れを感じているという声は散見されたというが、朝の持ち込し疲労に悩んでいる人は多いのか、それを解消したいというニーズはあるのか、さらには「朝の持ち越し疲労」という言葉が浸透することで自分ごととして捉えられるか、といった点を炙り出そうとしたのだという。
*【調査概要】
調査方法:「Fast ask」を用いたインターネットリサーチ
調査地域:全国
調査時期:2025年3月
対象者:男女40-50代 かつ 有識者
サンプルサイズ:1,398人
調査会社:ジャストシステム
朝の持ち越し疲労に通じる「3つの要因」
こうして得られたデータから、朝の持ち越し疲労に悩む現代人の実態が見えてきた。調査対象者の9割以上の人々が日常生活で疲労感を覚え、そのうちの2人に1人が朝起きた瞬間に疲れを感じていることがわかったという。


「これは、私が思っていた以上に高い結果でした。しかもそれを感じている期間は、1年以上と慢性化しており、約3人に1人が仕事に集中できないほどの疲れを感じていることもわかりました。また、疲れを感じる曜日にはばらつきがあり、最も多かったのは月曜日で、次点で金曜日というデータも得られました」


では、朝の持ち越し疲労を感じる人がこれほどまでに多いのはなぜなのか。主な要因は3つあると、梶浦たちは分析している。まずは「スマホの見過ぎ」が挙げられるという。
「スマホなどのデバイスが普及することで、いつでもどこでも、就寝前のベッドのなかでも動画コンテンツやSNSを見ることができるようになりました。それらの見過ぎが夜ふかしにつながり、疲れが溜まりやすくなることが考えられます」
ふたつ目は日常生活の「マルチタスク化」だ。
「共働きが当たり前になってきている現代社会では、仕事が第一の職場なら、家庭が第二の職場といった環境になってきており、家に帰っても常にタスクに追われている状況にあると言えます。特に女性では睡眠不足、人間関係に次いで「仕事と家事の両立」を朝の疲れの要因に挙げており、男性より2倍以上多いことがわかっています」
最後は働き方の多様化に伴う「リモートワークの普及」だ。
「リモートワーク普及はいい面もありますが、ネット環境さえあれば仕事ができるので、24時間いつでもどこでも働くことができてしまう側面もあります。仕事のオン・オフの切り替えがしづらく、そこから生じる不規則な生活リズムが朝の持ち越し疲労につながってしまっていると考えられます」
疲労を予防するプラスアルファの選択肢を
調査結果から朝の持ち越し疲労を感じていながら、予防策を講じている人は少ない傾向にあることも見えてきた。梶浦はこう説明する。
「疲れへの対処として、基本的な睡眠や入浴、食事以外に、サプリメントや栄養ドリンクを摂取するプラスアルファの対応をする人は17.7%と一部にとどまります。昨今、アクティブレスト(積極的休養)が注目されるようになってきましたが、疲労を予防するという考え方は一般にはまだ浸透していないと考えられます」

そうした課題を解決するために、まずは「朝の持ち越し疲労」があることを知ってほしいと梶浦は強調する。
「朝の疲労を覚えながらも対策に至っていない人々のために、まずはこうした疲労のあり方を言語化し、それを伝えていきたいのです。『もしかしたら自分にも朝の持ち越し疲労があるかもしれない』という気づきをもたらしたいと思っています」
「朝の持ち越し疲労の対処方法としては、睡眠をとる、しっかり食べる、運動するという基本的生活習慣の見直しも大切です。調査結果から、自分の健康状態や食事の栄養状況を把握できていない人も多いと推測され、そういったことを改めてチェックすることが大事です。そのうえで、忙しい日々のなかですべてを食事だけでまかなうのが難しい場合は、必要に応じて疲労に対処できる医薬部外品や栄養補給のサプリメントを活用するのもプラスアルファのひとつの方法です。自分のことを知って、自分に合った対策をぜひやっていただきたいです」
そのプラスアルファの選択肢のひとつとして大正製薬が提案するのが、「リポビタンDX」(指定医薬部外品)。
「リポビタンDXをリポビタンD(指定医薬部外品)の“錠剤バージョン”と認識されている方が多いのですが、実際には異なる部分があります。リポビタンDXの特徴は、タウリンやビタミンB群といった疲労回復成分に加えて、グリシン・シゴカといった睡眠サポート成分を含んでいること。ノンカフェインで、おやすみ前に服用していただくことで、就寝中の疲労回復が期待でき、まさに朝の持ち越し疲労の予防に役立ててもらえるのです」(梶浦)

梶浦の願いは、生活者が疲労にとらわれずにやりたいことができる社会の実現だ。
「人々が自己実現の欲求に向かって生活をしていくには、大前提として健康が大事です。そのなかでも私たちは、疲労の問題を解消させたいと願っています。朝の持ち越し疲労があることで、したいことができないということが起こりうる。日常の不安材料にもなってしまう疲労を取り除き、皆さんに豊かな人生を歩んでいただきたいとの想いがあります」
「大正製薬では今後、それを周知するための広告やキャンペーンを展開するほか、疲労改善グッズを開発する企業とタイアップするなど、企業の垣根を越えた取り組みも予定しています。その人に合ったアプローチ方法で疲労を予防・改善し、自分がしたいことができるようなサポートや取り組みを進めていきたいです」
大正製薬
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かじうら・まさし◎大正製薬マーケティング本部ブランドマネジメント1部飲料グループ。2015年、大正製薬入社。ドラッグストア店舗・本部営業、発毛剤「リアップ」のブランド戦略を経て、現在はリポビタンのブランド戦略に携わる。