新型MINIにハイ・パフォーマンス・モデル「JOHN COOPER WORKS(JCW)」のラインナップが今年2月に出揃った。5月9日には、その最高のパフォーマンスを体験できる「JCW RACING NIGHT presented by MINI」が開催された。
自動車がコモディティ化し、デザインが均一化してしまったと嘆いている人が多い昨今、今も個性を貫くブランドがある。そのひとつが、英国生まれのMINIだ。
カリスマティック・シンプリシティ──。
それは、10年ぶりにフルモデルチェンジを実施し、2024年までにすべてのモデルが生まれ変わった新生MINIのコンセプトであり、MINIらしさを盛り込んだ原点回帰を表している。
さらには、走りをより追求したハイ・パフォーマンス・モデル「JOHN COOPER WORKS(JCW)」の5モデルも今年2月までに出揃った。これにより、街乗りから走りを追求する本格派まで、すべてのユーザーのニーズに応えるレパートリーが整ったことになる。
数々の自動車レースを勝ち抜いた伝説のブランド
その本格派の欲求を満たすJCWのルーツは、1960年代に遡る。
レーシングカーデザイナーでありエンジニア、またレーシングカーコンストラクター、クーパー・カー・カンパニーの共同創設者でもあるジョン・クーパーは、誕生したばかりのMINIを見て驚いた。ハンドリングの良さと操縦の安定性が抜群だったからだ。MINIの性能に大きな可能性を見出し、スポーツモデルの販売を提案したことがその始まりだった。
クーパーは従来のやり方に縛られることなく、よりパワフルなエンジン、よりシャープなステアリング、そしてより鋭いブレーキをMINIに採用。そうして61年、初代「MINI Cooper」が誕生したのだった。
当時はセダン全盛の時代。ライバルたちがストレートで速さを競うなか、MINI Cooperはコーナリング性能を武器に、パワーで勝るセダンを凌駕。64年、65年、67年とモンテカルロ・ラリーを制覇するなど、数々のレースで猛威を振るい、自動車業界に大きな衝撃を与えた。

時は流れて2002年。ジョン・クーパーの息子、マイケル・クーパーが父の意志を受け継ぎ、レース部門ブランドとしてJCWを設立、チューニングパーツの販売を開始した。そして、再び自動車業界を驚かせた。ジョン・クーパーの伝説そのままに、12年から15年まで、ダカール・ラリーで4度の総合優勝を果たしたのだ。
その後、JCWモデルのクルマが販売されるようになり、20年には「MINI John Cooper Works GP」が公道走行を認められた“MINI史上最速モデル”として登場。JCWはレーシングヘリテージを継承する、MINI最高峰のハイ・パフォーマンス・モデルなのだ。
新型JCWは、そうした革新と技術が込められたレーシングヘリテージを継承する。24年10月にワールドプレミアを行うと、日本でも同月、ガソリン車モデル「MINI John Cooper Works」「MINI John Cooper Works CONVERTIBLE」を発表。今年2月にはバッテリーEV(BEV)モデル「MINI John Cooper Works E」と「MINI John Cooper Works ACEMAN E」も発表した。


MINI JCWとMINI JCW EはMINI COOPER 3 DOORがベースになっており、伝統的な丸いヘッドライトがアイコニックだ。また、今回初登場したBEVのJCW、MINI JCW E はMINI COOPER 3 DOOR、MINI JCW ACEMAN EはMINI ACEMANがベースとなっている。
新型JCWでまず目につくのは、新たにデザインされたエンブレムだ。それは、MINIの中でも最高峰のドライビングパフォーマンスを約束する証。多くのスポーツカーが日本の公道では本来のパフォーマンスを発揮できないなか、最も過酷な公道レースと言われるモンテカルロ・ラリーで鍛えられたモデルを現代に継承するMINI JCWは、日々のドライブにスリルを吹き込む。ドライバーのステアリング、アクセル、ブレーキ操作に対して車体がダイレクトに反応する「ゴーカート・フィーリング」により、街中をスリリングに駆け抜けることができるのだ。
BEVでも伝統に違うことなく、走りを追求している。Eブースト機能が搭載されており、停止状態からの発進やよりパワーが欲しいシーンでそれを作動させ、アクセルを踏み込むと、追加で約20kW/27ps*のパワーが10秒間供給。発進時や追い越し時などに、高加速ドライビングの楽しさを提供する。
*最高出力(190kW)はEブーストを含んだ値です。

足回りにもこだわり、JCW専用チューニングが施されたJCWスポーツ・サスペンションを採用。正確なハンドリングと卓越したレスポンスを実現している。さらには、特別に調整されたスプリングやスタビライザー、ダンパーによって、最適な安定性を保証。また、前輪のキャンバー角を大きくすることでハンドリング性能が高められ、コーナリングのグリップ性能が向上している。
JCWでもカリスマティック・シンプリシティのコンセプトが貫かれている。インテリアは、コンポーネントの数を削減することで走りの本筋にフォーカスし、感情的かつ直感的に感じ取れるアイデンティティが植え付けられている。
一方で目を引くのは、新型MINIシリーズにも搭載されている、直径240mmの大型円形センター・ディスプレイだ。統合されたインフォテインメントと空調機能などをスマートフォンを操作するように直感的に操作することができる。伝統を引き継ぎながらも、未来を感じさせる車内空間となっているのだ。
「JCW RACING NIGHT」で最高のパフォーマンスを体感
MINIファンならずとも新型JCWのポテンシャルが気になるところだが、それを実際に体験してもらうことを目的に、5月9日、東京ベイエリアにある「BMW GROUP Tokyo Bay」で「JCW RACING NIGHT presented by MINI」が開催された。

プロレーシングドライバーが運転するMINI JCWやMINI JCW Eの助手席に乗車し、その最高のパフォーマンスを体感することができるレーシングタクシーを実施。抽選に当選した顧客が、夜のコースでスリルを体験した。
まずはトップバッターとして、モデルのマギーがBEVのMINI JCW Eを体験。「走り出しの高加速に驚き! コーナリングのグリップをしっかり感じる走りを楽しめました」と興奮しきりだった。
MINI JCW Eは、アクセルを踏み込んでもほとんど音がないが、加速は鋭く、JCWの本質が損なわれていない。ストレートを猛スピードで駆け抜け、コーナーが迫ると小気味いいブレーキングであっという間に減速する。まるでジェットコースターが急降下するときのような浮遊感がある。車内の演出や音声を変えるエクスペリエンス・モードをGo-Kartモードに変更すると、車内ではアクセルの踏み込みに合わせてエンジン音を演出。ドライバーの気分を高揚させてくれる。
一方、ガソリン車のMINI JCWは、アクセルを踏み込むとエンジンが重低音を響かせながら一気に加速。タイヤは雨で濡れた路面をしっかりと捉え、車体を外側に傾けながら高速でS字カーブを回り、まるでレーシングカーのようにコースを駆け回る。ドライバーは「ゴーカート・フィーリングでハンドルを切るとすぐにクルマが反応するので、運転していて楽しい」と笑顔で説明してくれた。
MINI JCWに乗車した参加者は「ウェットな路面でしたが、アクセルを踏み込んだ時にしっかりと路面を蹴ってくれていると感じました」とJCWの信頼性の高さを口にした。また、MINI JCW Eに乗車した参加者は「壁に近づいていく感じで、少し怖かったです」とそのスリルにドキドキ。また、車内で聞こえたエンジン音のあまりのリアルさに驚いていた。



会場には実況ブースも設けられ、F1の実況中継も担当する人気DJのサッシャと自動車ジャーナリストの今井優杏が、トークでイベントを盛り上げた。サッシャは「エクステリアも素晴らしいけど、インテリアがすごく可愛い」とぞっこん。今井は「このボディにターボエンジンが載ると、こんなに軽やかに加速するのだということを、しっかり感じることができる。このエンジンは傑作です」と絶賛した。

こうして好評のうちに幕を閉じたJCW RACING NIGHT。イベントに参加できなかった人は、試乗が可能なので、東京の街中などでサーキットのようなスリリングなドライビングを体験してみよう。

MINI JOHN COOPER WORKS
https://www.mini.jp/ja_JP/home/range/john-cooper-works-new.html