苦境鮮明の中国EV市場、「理想汽車」創業者の資産は1カ月で半減

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中国の電気自動車(EV)メーカー「理想汽車(リ・オート)」の創業者の李祥(リー・シャン)の保有資産は、大幅なディスカウントや、精彩を欠いた製品の発売、そして市場のボラティリティの高さを受けて1カ月あまりの間に以前の100億ドルからほぼ半減した。

フォーブスは、42歳の李の現在の保有資産を61億ドル(約9400億円)と試算している。香港市場と米ナスダック市場に二重上場する理想汽車の株価は、ナスダックで2月下旬の高値から40%以上急落した。また、香港市場では同期間に45%急落した。

EV業界は、業界のリーダーであるテスラを筆頭に、大きな苦境に直面していると調査会社86Researchのアナリストは述べている。さらに、中東情勢の緊迫も市場を動揺させ、投資家がテクノロジーやEV株などのリスク資産から手を引く原因になっていると調査会社ブルー・ロータス・キャピタルも述べている。

理想汽車は、特に最新モデルで市場を熱狂させることができなかった後、激しい価格競争に巻き込まれている。先週末にテスラが中国全土で価格を引き下げた後、同社は4月22日に旧モデルの価格を最大5%も引き下げた。

理想汽車の株価は22日の香港市場で9%も下落した。投資家は、積極的な値下げが粗利益率に打撃を与え、第2四半期の粗利益率が20%を割り込むのではないかと懸念していると86Researchのアナリストは述べている。理想汽車の昨年の最後の3カ月間の総利益率は23.5%だった。

しかし、販売台数を伸ばすためには、価格を引き下げる必要がある。理想汽車が3月に発売した新モデルのLi Megaは、55万9800元(約1200万円)という価格の高さのためにヒットしていない。

李自身も失敗を認めており、3月21日の声明で「当社の経営戦略は誤ったペースだった」と述べていた。同じ声明で、理想汽車は第1四半期の納車見通しを以前の予想の10万台から10万3000台のレンジから、7万6000台から7万8000台に引き下げた。

理想汽車は18日に高級ハイブリッドSUVのL6を発表したが、アナリストによるとこの車両は、 L7や、L8、L9といったこれまでの車種と異なり、非常に厳しい競争に直面しているという。同社は、製品ラインナップの幅を広げるためにL6のサイズをやや小ぶりにして価格を24万9000元(約530万円)からと、同社にとって最も安いモデルにした。しかし、上海の調査会社Automotive Foresightによると、L6と同程度のサイズの競合車は数多く存在するという。

ファーウェイもEV市場に参入

一方、スマートフォン大手のファーウェイが中堅商用車メーカーの小康工業集団(セレス)と共同で立ち上げた新ブランドのAito(アイト)は、L6の直接的なライバル車両のM5や、その改良版のM7などの車両を投入している。「レンジエクステンダーEV」と呼ばれる種類のプラグインハイブリッド車(PHV)であるM7の価格は28万9800元(約560万円)となっている。

理想汽車はまた、今年の納車目標をこれまでの80万台から56万台から64万台のレンジに引き下げたと広く報じられており、86Researchは、同社の納車台数が60万台程度になるかもしれないと予測している。また、生産台数が需要を上回る限り、EV業界の価格競争は続くだろうとも述べている。
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編集=上田裕資

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