「スキンシップ」は心身の健康に好影響、 大事なのは相手ではなく回数

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年齢にかかわらず、人や動物とのスキンシップが不安やうつ、さらには痛みを軽減するのに役立つことが、行動科学専門オンラインジャーナル『ネイチャー・ヒューマン・ビヘイビアー』にこのほど掲載された研究論文で示された。

同研究は212の研究のメタ分析とレビューを行ったもの。筆頭著者で独ルール大学ボーフムのジュリアン・パックハイザーらは論文に「触覚は生活のさまざまな面において非常に重要なもの。新生児が最初に発達させる感覚であり、どの感覚よりも物理的・社会的環境に直に接するものだ。自身の触覚体験を補完するものとして、例えば、同意の上でのハグやキス、マッサージなどを通じて、私たちは周りの人から定期的に触覚体験を受けている」と記している。

「マッサージや母親が出産した赤ちゃんを抱くカンガルーケアといった最も一般的なスキンシップは生涯を通じて成長や発達を促したり、不安やストレスを和らげたりと、心身に幅広く好影響をもたらすことが示されている」とも指摘している。

スキンシップが健康に及ぼす好影響をさらに調査するため、研究チームは計1万2966人を対象に2022年10月までに行われた212の研究の系統的レビューとメタ分析を行った。分析ではスキンシップをともなうもの、伴わないもの両方の人とのやり取りの影響を詳しく調査。対象とした研究におけるスキンシップの大半は、大人が受けたマッサージ療法と新生児のカンガルーケアだった。

研究者らはスキンシップを持った大人に健康上の好影響がもたらされたことを確認した。驚くべきことに、そのスキンシップが親しい人とのものなのか、あるいは見知らぬ人との同意に基づくものかは関係なく効果があった。

「スキンシップはパートナーや家族、友人といった親しい人、あるいは医療従事者など馴染みのない人とも行われる。大人の場合、スキンシップを持つ相手と親しいかどうかの影響は認められなかった」と研究者らは述べている。同様に、心身への好ましい影響でも大きな差は認められず、大人におけるスキンシップの効果は相手が親しい人かどうかは関係がないことが示唆されたという。対照的に、新生児が受けるスキンシップの効果は、見知らぬ人とのものより両親(ほぼすべての研究が母親によるものを対象とした)とのものが大幅に大きいことがわかった。

大人の場合、20分間の同意に基づくスキンシップを、平均2.3日の間隔で4回受けることでメンタルヘルスの改善が見られたという。新生児の場合、17.5分間のスキンシップを1.3日間隔で理想的には7回行うと効果があった。

「どのようなスキンシップを持つかはそれほど重要とはみられない一方で、頻度は効果に影響を及ぼすようだ。回数が多いほど、大人ではうつや不安などの改善が見られ、痛みも軽減した。対照的に、各スキンシップの時間を長くしても健康へのプラスの影響は大きくならなかった」と研究者らは説明した。

「スキンシップを持つ身体の部位については、腕より頭の方が効果が大きいことがわかった。顔や頭皮のマッサージのような頭部のスキンシップは特に有益な可能性がある」という。

「スキンシップは大人や子どもの痛みやうつ、不安を軽減し、新生児の体重増加の促進に大きく貢献することが明らかになった」と結論づけている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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