キャリア・教育

2024.04.27 08:00

「みんなで一緒につくり上げるプロジェクト」ONE OK ROCK・Takaの10年後への挑戦

Forbes JAPAN編集部

音楽とプロジェクトで共通する思い

厳しい基準を設けて商品を選定するのには理由がある。「今の時代はパッケージを意識したやり方が多い。外側で魅せるのではなく、内側の本質的な部分を理解してもらうことでつくり手と受け手に強いコネクションが生まれる」とTakaは指摘する。「ステージ上では一対一のつもりで人とのつながりを意識しているように、このプロジェクトでも大きく広げることより、意思疎通が取れる距離感で一人ひとりと向き合えるようにしていきたい」と、音楽もプロジェクトも根幹にあるのは同じモチベーションだという。

そんな思いから、接客にもこだわり、店舗スタッフは全員栄養士の資格を持つ。顧客はその日の体調や献立を相談しながら商品を選ぶことができるほか、カウンセリングルームで個別にじっくり話を聞いてもらうこともできる。ふたりよがりなもので終わらせず、スーパーに訪れる人と価値観を共有し、共にブランドをつくり上げていくことを掲げる。

訪れる人や農家とのコミュニケーションといった地道な活動を重んじる一方、世界を目指したブランド展開も視野に入れる。「バンド活動を通じて、日本のなかからだけではなく、世界という外側からアプローチしていくことをやってきた。同じように、新しいものをつくっていくためにはグローバルな視点で既存のシステムを見直す必要がある。日本の文化や歴史を守るためにも、世界を見て己を知ることが大事なのです」(Taka)

ふたりが目指すのは「10年後の未来」。10年という区切りについて、Takaは「簡単になんでも手に入るインスタントな世の中の流れとは真逆に、僕たちがやり切るには10年かかるという思想をぶつけ、いい意味での時代の反逆者でありたい」と語る。恩地は、今後についてこう続ける。「まずは手に取りやすい価格にしていくことが課題。自然栽培の食材のおいしさや、難しい自然栽培にチャレンジする人たちの想いを15/e organicを通じて伝えていく。自然栽培に取り組む農家を増やしたり、僕たちが農地を買って生産量を増やしていくことで、多くの方が自然栽培の野菜を選ぶような未来をつくりたい」と意気込む。

「みんなが安心して手に取れる野菜が日本全国で育つ未来」に向け、ふたりが強調するのが「みんなで新たな価値観や意識をつくり上げていくプロジェクト」であるということ。「何事にも完璧はありません。だからこそ、このプロジェクトとともに僕たちも成長することで、10年後、何かのかたちになると信じています」(Taka)。

築40年の木造物件をリノベーションした店舗は表参道の大通りではなく、路地裏にひっそりと佇む。それは、ふたりの思いを一方的に押しつけるのではなく、一歩引いて、訪れた人たちとともに価値観を共有できる場所として打ち出しているがゆえの姿なのかもしれない。


Taka◎1988年、東京都生まれ。2005年にONE OK ROCKに加入し、ボーカルと作詞作曲を務める。07年に「内秘心書」でメジャーデビュー。「完全感覚Dreamer」などがヒットし、15年に米ワーナー・ブラザース・レコードと契約。ロサンゼルス在住。

恩地佑亜◎1988年、和歌山県生まれ。19歳で起業を決意し、20歳でONPA JAPANを設立する。物販事業からスタートし、現在は美容と健康事業などを行う。これまでにインターネット販売、店舗運営、ウェブマーケティングなど、多角的な事業展開を行ってきた。

文=川上みなみ 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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