ライフスタイル

2024.05.05 15:00

変革の情熱をかき立てた一本のレガシーと言葉

Forbes JAPAN編集部

1965年に登場したシックのカミソリ

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。


THE GIFT #11

後藤秀夫

シック・ジャパン代表取締役社長
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1965年に登場したシックのカミソリ。
当時はショートハンドルに一枚刃のダブルエッジが主流だった。
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シック・ジャパンの代表取締役社長に就任した当日、アメリカから小包が届いた。送り主は、シック・ジャパンが所属するエッジウェル パーソナルケアのグローバルCEOであるロッド・リトル。彼は、私がウェットシェービングの歴史や技術革新に深く興味をもつきっかけを与えてくれた人物だ。彼との会話からは、製品に対する情熱や会社に対する改革意識の強さが伝わってきた。さらにシェーバーだけにとどまらない新しいシェービング市場を開拓していくという彼の強い思いに魅了されると同時に、日本市場にも大きな可能性を感じワクワクしたことを今でも鮮明に覚えている。

小包の中身は、シックが1965年に発売したクラシカルなメタルボディのカミソリだった。そこには「過去のレガシーを受け継ぎながらも、シェービング界に革命を起こそう」というロッドからのメッセージも。今もオフィスデスクに置かれたそれを目にすると、入社のきっかけとなった彼との会話や、シェービング業界への情熱を思い起こさせてくれる。今後の方向性に迷ったときも、歴史を感じさせるその一本が私を原点に立ち返らせ、新しいアイデアの源となってくれるのだ。


ごとう・ひでお◎1973年、東京都生まれ。米国サンダーバード国際経営大学院卒業後、96年にジョンソン・エンド・ジョンソンに入社。2005年に日本ロレアルに入社し日本と台湾で事業部長を歴任。17年にはヘンケル ビューティケアの日本兼韓国の代表へ。一貫してビューティ領域で活躍。22年8月より現職。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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