事業継承

2024.04.22 12:00

組織変革から地域共創型まで。新しい事業承継100社(後編)

Forbes JAPAN編集部

リボン食品 組織改革|新規事業

代表者|筏由加子 設立年|1948年
日本初のマーガリン製造技術で100年以上、製菓・製パン原料を提供。業務用の冷凍デザートケーキで有名なBtoB企業だった。創業家の由加子氏は渡米してホテル勤務後、2012年に入社。事業をBtoCに拡大。妊娠準備中・産前産後の女性をサポートするフードブランドを立ち上げたほか、米ブラウニーブランドの事業承継を依頼され、グローバル化。

側島製罐 組織改革|ビジョナリー

代表者|石川貴也 設立年|1942年
日本政策金融公庫での勤務後、「社是なし、理念なし、社訓なし」で空中分解しかけていた老舗缶メーカーを事業承継。「世界にcanを」「宝物を託される人になろう」など、全社員で理念を策定。自律型のティール組織に変身。業務改革や広報活動で注目され、各賞を受賞。子どもの思い出を保存する缶「Sotto」など自社ブランド製品も販売する。

CATEGORY 05|地域とともにつくる

一社の持続的繁栄は地域社会全体の繁栄なくして成り立たない。自治体や同じ地域や業界の企業などと手を組み、地域とともに永続的発展を目指す。異業種連携の事例も生まれている。

上川大雪酒造 事業再生|地域共創

代表者|塚原敏夫 設立年|2017年
日本酒の製造を中止していた三重県の酒造会社を買収し、北海道・上川町に移転し、同社を設立。2017年に酒造開始。日本初の酒蔵の遠距離移設により、自治体や企業から視察が殺到している。さらに20年には十勝の帯広畜産大学の構内で、21年には函館で廃校になった小学校の敷地に新たな酒蔵を創設。北海道出身の塚原氏が新しい地域活性に挑む。

協同商事 事業再生|地域共創|ブランディング

代表者|朝霧重治 設立年|1982年
現社長の朝霧氏は、三菱重工業を経て1997年、義父が経営する有機農産物専門商社の同社に入社。2009年に代表取締役に就任。地ビール事業を転換し、日本には珍しかったクラフトビール市場を創出。会社をリブランディングして、「COEDOビール」の販売で再生させる。醸造所併設レストランを開き、「ブルワリーのある街づくりの共創」を掲げる。

サツドラホールディングス 地域共創|新規事業

代表者|富山浩樹 設立年|2016年
社長交代時、すでに北海道で200店舗以上を展開し周知されていた「サッポロドラッグストアー」から「サツドラ」へ社名変更。ローカルではなく「リージョナル(地域)」を打ち出し、北海道の共通ポイントカード「EZOCA」、コミュニティ事業、メディアの三本柱でドラッグストアの枠を超えた地域活性化策を次々と打ち出している。

三星グループ 地域共創|産業観光|コミュニティ

代表者|岩田真吾 設立年|1931年
創業130年以上の繊維メーカー5代目の現社長は2008年入社。赤字だった繊維事業を立て直したほか、愛知・岐阜を中心とする尾州ウール産地で開催する産業ツーリズム「ひつじサミット尾州」の代表発起人を務めるなど、業界・地域を超えた活性化に貢献している。23年に羽島市の本社でスタートアップとアトツギの共創コミュニティ「タキビコ」を始動。

高橋 多角化|コミュニティ

代表者|高橋彦太郎 設立年|1949年
繊維メーカーとして創業した同社が工場用地として取得し、長年ボウリング場などとして活用してきた「スポーツガーデン香椎」を2021年に複合商業施設「ガーデンズ千早」にリニューアルオープン。3代目である彦太郎氏が新規事業としてスポーツクラブ事業を立ち上げ、事業開発、M&Aの経験を生かし地元福岡発の起業を増やす活動に取り組んでいる。

藤田酒店 地域共創|新規事業|スタートアップ

代表者|藤田圭一郎 設立年|1975年
岡山の業務用酒販店「藤田酒店」。圭一郎氏は取引先の飲食店向け求人サイトを立ち上げて販路を拡大。ほかにも地域VCや、地方学生のための長期インターンシップ求人サイト「COMPUS」立ち上げなど、家業とは別に複数の新規ビジネスを展開。23年に岡山で開催したスタートアップとベンチャーの祭典「BLAST SETOUCHI」実行委員長。

マルヒロ ブランディング|コミュニティ

代表者|馬場匡平 設立年|1989年
有田焼の下請けを担う産地問屋として創業。産地記載の厳密化に伴い、当時浸透していなかった「波佐見焼」の名称に変更したところ売り上げが激減。倒産寸前となった家業を2008年に継承し、新ブランド「HASAMI」立ち上げで再生に成功。本社周辺に私設公園「ヒロッパ」をつくり、ショップやコーヒースタンドを開く。社員は若い移住者が多い。

ハイジェント ビジョナリー|新規事業

代表者|小林剛 設立年|1970年
金属加工、めっき加工を主業とする製造業。コロナ禍に食糧危機に関心を持ち、本業と並行して21年に食用コオロギの養殖を開始。同社の山形工場で精密部品と同等の品質管理を行ったことで、食用コオロギの生産体制を早期に確立。粉末を練り込んだパスタやかりんとうなど、地元名物として売り出している。23年には岐阜の工場でも生産に乗り出した。
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この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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