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2024.04.11

循環経済への移行に求められる企業の視点とデジタルの活用とは?

近年、ビジネスにおいても環境の持続可能性を見据えた価値の創出がスタンダードとなっている。特に急務とされているのが、これまでの大量生産・大量消費を前提とした線形経済(リニアエコノミー)から、資源を効率的に利用し、かつ循環させることを目的とする循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行だ。

日本ではまだ国や自治体が主導となってモデルケースを作る初期段階にあるが、変容への兆しは確実に生まれている。NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が進める、ICTの知見を武器にした取り組みもそのひとつだ。

今回は、NTT Comが提供する事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」においてGX・SXの専門家(CATALYST)として活躍するビジネスソリューション本部スマートワールドビジネス部スマートインダストリー推進室担当部長の鈴木与一と、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)の「持続可能な消費と生産領域」でプログラムディレクターを務める堀田康彦が、循環経済に取り組む際の観点、そして日本及び日本企業が担う役割について語り合った。


ライフスタイルやビジネスモデル、都市のあり方
すべての変化が求められる

──改めて、お二人のキャリアと循環経済のかかわり方についてお聞かせください。

堀田康彦(以下、堀田):私はIGESにおいて、「持続可能な消費と生産領域」でプログラムディレクターを務めています。IGESはアジア太平洋地域の持続可能な開発・発展の実現に向けた政策提言や研究を行う国際的シンクタンクです。

私自身はこれまで、3R(リデュース・リユース・リサイクル)、循環経済に関してG7・G20が議論していくプロセスを支援したり、東南アジア諸国の循環経済への移行支援を担当してきました。


鈴木与一(以下、鈴木):私はNTT Comにおいてデジタル活用で事業を生み出す分野を担当してきました。近年は、環境にまつわる社会課題とデジタル領域からアプローチすべく、カーボンマネジメント、カーボンクレジット、サーキュラーエコノミーという3つのテーマでの事業検討と企業の支援をしています。

——循環経済が求められてきた背景と日本の現状についてはどのように見ていますか。特に日本の場合は、「もったいない」の文化が3Rと親和性が高く、浸透しているともいわれています。

堀田:持続可能な消費や生産に関する政策は、大きく3段階で発展してきています。第1段階は、大気や水などの環境汚染対策、日本で言えば公害対策のようなもの。それが第2段階では、これまで大量生産・消費されてきた製品の性能を上げるなど、環境問題にどう対処していくかが問題になってきました。たとえばエネルギー効率を上げる、省エネ製品の性能を上げて温暖化対策につなげるといった考え方や、廃棄物を極力出さない製品づくり、廃棄物のリサイクル、トレーサビリティから製品の生産を考えるといったことも第2段階です。

では、第3段階は何が求められるのか。2015年以降、SDGsへの合意、パリ協定における平均気温上昇1.5度以内の努力目標の合意など、長期的なビジョンをもった国際合意が形成されています。3Rで環境負荷を下げていくという考え方から一歩進み、ライフスタイルやビジネスモデル、都市のあり方を変えようとする動きがみられます。ビジネスモデルとしては、ゴミを出さないようにする、使用を終えた製品が製造者などサービス提供者側に戻り、管理・改善されて出てくることが重要。社会全体がこういった方向に進んでいくのが、循環経済の特徴です。

日本は3Rが根付いているという素晴らしい文化がある一方で、さまざまなビジネスモデルが早い段階で便利に提供されているので、そこから抜け出すのが難しくなっている面があるかもしれません。途上国は便利なサービスや商品がなかったがゆえ、循環経済に移行しやすいという土壌があります。

——NTT Comは早い段階から循環経済に向けたチャレンジを始めています。どういった背景から取り組みを始めたのでしょうか。

鈴木:製造業のサプライチェーン、バリューチェーンにおけるデータ活用という事業を検討していくなかで、「トレーサビリティ」がキーワードとして浮上してきました。ただ、トレーサビリティだけでは義務や規制の視点でデータを見るだけにとどまってしまいます。そこで資源をしっかり見て効率化していく、社会課題解決+αの事業を推進していくべきではと考えました。その中で、サーキュラーエコノミー(循環経済)という言葉に出会い、サーキュラーエコノミーを事業テーマとしたのです。また、同じ頃にカーボンニュートラル推進に悩む声を顧客企業から聞き、両方をミックスし、相互の関係性を考えていくという事業領域に進み始めています。

NTT Comの強みはIoT/AIなど、さまざまなデータを収集、蓄積、活用する技術を持っていることです。例えば、シェアバイクの活用データの取得や、EV車のバッテリーのモニタリングなどはもちろん、資源循環のために回収した資源を活用してどういった素材をどのぐらい混ぜることで製品として使えるかをシュミレーションするといったことも可能です。

堀田:トレーサビリティがきっかけというのは、すでに先に挙げた第2段階からスタートしているといえます。データ製品が廃棄物になる、もしくは製造段階で環境に配慮されているのかをデータとして蓄積していくこともこれからは重要になっていきますね。

環境問題において議論するときに頻出するのが、「データが存在しない」もしくは「データを取ることが難しい」という問題です。その意味でも多様なデータを持っているICT企業には、循環経済への積極的な取り組みを期待しています。
地球環境戦略研究機関 「持続可能な消費と生産領域」プログラムディレクター・堀田康彦

地球環境戦略研究機関 「持続可能な消費と生産領域」プログラムディレクターの堀田康彦

データで現状と課題を可視化し、
行動変容につなげる

鈴木:循環経済への取り組みとして、NTT Comでは今、大きく二つのプロジェクトに取り組んでいます。

一つは「金属スクラップ・建設廃材資源循環プラットフォーム」です。建築物の解体工事では廃材が大量に出ますが、そのなかの鉄に着目しています。建設廃材の鉄を電炉にて電気で還元処理し、鉄を再生することは、天然資源である鉄鉱石と石炭などから鉄をつくるよりもCO2排出量が少なく、環境負荷が低いです。さらに、電炉で活用する電気に再生エネルギーを使用することで、よりCO2排出量を少なくできます。そのため、鉄の電炉による循環は注目されています。

ところが、鉄を含む建設廃材の回収及びリサイクルを担っているのは中小企業が多く、デジタル化が進んでいない企業も多いのです。そこで、物流の手配をデジタルで効率化する。また、どんな資源がどのぐらい集まってくるか、データを収集・可視化することで、リサイクルの循環を後押しする。それによって資源循環や廃棄物削減に貢献できるのではないかと実証を進めているところです。

堀田:資源の来歴は今後問われてくると思います。またリサイクルに関わることをデータによって結び付け、効率化してくのは非常に重要で、意義のある取り組みですね。

最近の動きとして、欧州では資源の再循環を可視化する動きが活発です。可視化することで、環境に大きな影響を与えそうなものを途上国に流さないようにしているのですが、NTT Comさんの取り組みは、実は国際的な資源循環への信頼性や透明性、効率化に寄与していけるのではないでしょうか。

鈴木:ありがとうございます。ぜひ国際的に展開していきたいです。

もう一つは、「サーキュラー・プラットフォーム」です。一般家庭から排出される容器プラスチックを資源回収拠点(収集所)まで持ってきてもらい、分別回収します。どのような資源がどのようにリサイクルできるのか、パートナー企業がさまざまな企業と実証実験を行っています。資源回収拠点(収集所)は地域コミュニティの場としての機能を有し、それらはそのパートナー企業が企画運営をしています。NTT Comは情報収集及び活用のためのデジタルプラットフォームを提供し、資源循環におけるデータ収集と活用、企業間コミュニケーションの効率化をしていきたいと考え、取り組んでいます。効率的に資源循環を行うための支援、環境負荷の影響把握から改善、さらには地域の方々のウェルビーイングに生かせるよう、データを収集・分析・活用していきたいと考えています。

堀田:循環経済への移行を推進していくにあたって、産官学連携は非常に重要になっています。具体的な仕組みとして、こういった地域コミュニティとの連携は不可欠だと感じます。連携というと、どうしても人と人とのつながりに依存しがちですが、データや企業が有している技術、そして情報を共有してくこともとても有効ですね。

一方で、このようなプラットフォームが国際的にも立ち上がってきています。それらとどう連携していくのかはこれからの課題だと感じました。

鈴木:ありがとうございます。おっしゃる通り、連携は必要です。よくプラットフォームを一つにし、一カ所にデータが集まるのが理想だといわれていますが、それは現実的ではないと、私は考えています。農業が中心の地域と、都市部のビルが集まる地域では出てくる資源が異なります。また、資源の循環(リサイクル)のために回収した資源を長距離輸送することになれば、エネルギー利用やCO2排出の観点では環境負荷増となり本末転倒です。資源をなるべく移動させずに循環させる(リサイクルする)には、リサイクル材の品質基準や環境負荷影響に関するルールを定めること、そして、地域ごとのデータ活用プラットフォームを連携する形の方が良いのではと考えています。
NTT Comビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートインダストリー推進室 担当部長の鈴木 与一

NTT Comビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートインダストリー推進室 担当部長の鈴木 与一

——NTT Comのように取り組みを進めていくことで、循環経済への移行の課題とそのアプローチも見えてきているのはないでしょうか。

鈴木:特に企業視点ですと、資源の回収からリサイクルまでのコストやリサイクル材活用の費用対効果が非常に大きな課題となっていると感じます。資源リサイクルについては誰もが賛成ではあるものの、そのためのコストは製造の原価に転嫁されてしまいます。そうなると価格競争の面で商機を逃す、競争に負けるのではないかという懸念をさまざまな企業からお聞きします。

また、費用対効果も関係ありますが、例えば資源を回収する段階でのリユース的観点や、リサイクル材の品質基準などのルールがまだ定まっていないので、推進に戸惑いが生じています。

堀田:コストや費用対効果を是正していくのは、政策の役割だと思います。それがなければ、行動変容にも結びつきません。たとえば、政府が一製品におけるリサイクル材使用割合の指針を示すこと、そして段階的にそれを引き上げていくなどの政策も必要です。企業側の負担が大きくなりすぎないようにバランスを取りながら勧めることが前提ですが、基本的には政策が公正な競争市場をつくっていくべきです。

循環経済も脱炭素の動きも欧州で先行していることもあり、多くの日本企業は「規制されてから対応する」という待ちの姿勢になっています。しかし、私は日本にとってのチャンスだと捉えています。日本は特に技術はもちろん既存のビジネスでも、循環経済に対応できるものを多く持っています。ここに自信をもって日本がリードすべき循環経済の像を描き、その実現に向けて政府に働きかけていくべきだと思います。

また、同時に新たなビジネスやベンチャーを育てていく視点が求められています。既存ビジネスモデルにしがみつく状況では、後退を招くことになりかねません。現状を打破するようなチャンスの種を撒き、積極的に投資していく姿勢が必要ではないでしょうか。

鈴木:OPEN HUB for Smart World」もそうですが、専門的な知見・技術を有する企業が企業規模に関係なく、互いの良いものを持ち寄り、新たな価値を生み出すような仕組みが生まれてきています。NTT Com も、たくさんの企業の方々、ステークホルダーの方々とご一緒し、新たな価値を創造していきたいと考えています。そこでの活動が、新たな価値を生み出す事業開発だけではなく、サスティナブルな社会の実現につながると考えています。


Xtrepreneur AWARD 2023 特設サイトはこちら
https://forbesjapan.com/feat/xtrepreneur_award_2023/

OPEN HUB for Smart World
https://openhub.ntt.com/


堀田康彦◎地球環境戦略研究機関の「持続可能な消費と生産領域」プログラムディレクター。循環型社会構築に関連する政策イニシアティブや研究プロジェク トに関わってきている。2021年より、アジア太平洋持続可能な消費と生産円卓会議(APRSCP)の副会長を務める。

鈴木与一◎NTT入社以来、現場でインターネットとアプリケーションを組み合わせたソリューションの企画開発/提供に従事。映像配信事業、クラウド事業、IoT事業に携わり、現在は、GX/SXの事業開発を担当している。主なテーマはカーボンマネジメント、カーボンクレジット、サーキュラーエコノミー。

Promoted by NTTコミュニケーションズ / text by Nayu Kan / photographs by Yutaro Yamaguchi / edited by Kaori Saeki

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