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2024.03.28 14:30

ガザの子どもたちが直面する飢餓や栄養失調、心身におよぼす影響

安井克至
さらに、栄養失調に陥ると心臓の最適な働きに不可欠な栄養素や電解質のバランスが崩れがちだ。例を挙げると、カリウムは心筋細胞に不可欠な電解質だが、欠如すると子どもも大人も不整脈として知られる異常な心拍リズムを起こしやすくなり、場合によっては命にかかわることもある。

小児期の飢餓は後に心臓の合併症につながることもある。オンライン科学ジャーナル『フロンティア・イン・パブリックヘルス』に掲載された研究によると、幼少期に飢饉を経験すると大人になってから心不全で入院するリスクが高まるという。この研究では、3万6000人超を対象に、中国で発生した飢饉(1959-1962年)中またはそれより前に生まれた人と、飢饉後に生まれた人の心不全を発症するリスクを比較している。

身体の病気だけでなく、飢餓は子どもの認知能力や知能の成長にも深刻な影響を与える。飢餓によって脳が正常に機能するのに必要な栄養素が奪われ、これが注意力や記憶力、問題解決能力の低下、そしてかんしゃくやうつ、気分の変動、不安につながることはよく知られている

また、学校の成績が低下し、長期的には仕事に対する意欲や経済的機会に影響を及ぼす可能性がある。加えて、栄養失調の長期的な影響として不安やうつといった多くの心の病気を引き起こす可能性があり、その多くは薬物乱用や自殺、短い寿命につながる。

飢餓がもたらす健康への影響は、ガザの子どもたちを蝕んでいる。子どもたちには何の罪もなく、イスラエルとハマスの政治的な対立とは一切関係がない。世界が団結して緊急停戦と急を要するガザの人々への人道支援を求めるまでに、あと何人の子どもたちが栄養失調で命を落とせばいいのだろうか。

ユダヤ教とイスラム教の伝統は、1人の命を救うことは全人類を救うことに等しいという精神的な教えを共有している。可能な限り多くの子どもたちを救うために、今こそ世界は1つになるべきだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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