海外

2024.03.25

電力会社の送電容量を40%増強するノルウェー企業の「マジックボール」

(C)Heimdall Power

米国の電力各社が電力需要の急増に直面する中、ノルウェーのハイテク企業が既存の送電容量を最大40%増やし、より多くの電力を供給可能にするためのセンサーとソフトウェアを開発した。

オスロに本社を置くHeimdall Power(ヘイムダル・パワー)は、ミネソタ州を拠点に170万人の消費者と企業に電力を送るグレート・リバー・エナジー社に、同社が「マジックボール」と名づけたボーリング玉ほどのサイズのセンサーを数十個供給する契約を結んだ。グレート・リバー社によると、ヘイムダル社のソリューションは試験プロジェクトで送電容量を43%増加させたという。

「送電線の限界は、送電線が熱を持つことにあります。ソフトウェアとセンサーがなければ、スピードメーターがないクルマを運転するような状態になるのです」とヘイムダル社のヨルゲン・フェスターヴォルCEOはフォーブスに語った。

送電線は重要なインフラであるため、天候や風の影響に関するリアルタイムのデータが不足している場合、電力会社は通常、実際に処理できる量よりも少ない電力を送っている。送電線が高温になると電気抵抗が上昇するため、熱は特に問題となる。しかし、ヘイムダル社が開発したセンサーと監視ソフトウェアがあれば、送電線を危険にさらすことなく、より多くの電力を送電することができるという。

フェスターヴォルCEOとグレート・リバー社は、米国最大の「ダイナミック・ライン・レーティング」プロジェクトであるこの契約の金銭的な詳細を明らかにしなかった。


米国では製造業の活況や電気自動車(EV)の増加、暗号資産のマイニング、さらには人工知能(AI)向けのデータセンターの急増といったさまざまな要因が電力需要を押し上げている。米エネルギー情報局(EIA)は先月、今年の電力需要が昨年を3%上回り、2025年も増加し続けると推定した。しかし、風力発電や太陽光発電システムの建設コストは低下しているが、その電力を送るための送電線の建設コストは高止まりしている。

ヘイムダル社のソリューションが電力会社にとって魅力的なのは、新たな送電線を建設せずに送電容量を増やせるからだ。

フェスターヴォルCEOは、ドローンを使って設置する同社のセンサーが、競合よりもはるかに低コストだと述べている。ヘイムダル社のセンサーの価格は約3万ドルで「検証可能なデータに基づくと、私たちの製品のコストは、レガシー・プレイヤーの20%程度です」と彼は述べている。フェスターヴォルCEOは、同社の回線監視サービスの料金については言及しなかった

ヘイムダル社のソリューションの導入コストは、新規の送電線の建設費用の「わずか1%から5%」であることから、同社は需要の急激な伸びを見込んでいる。「当社の技術を導入すれば、数十億ドルもの費用を節約することが可能です」とフェスターヴォルCEOは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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