気候・環境

2024.02.22 08:00

災害大国・日本の教訓を世界に 被災地で進むドローンやAI活用

督 あかり
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今回の地震は、全国で路線強化や代替ルートの確保が急務であることを浮き彫りにしました。

また、能登地震の初動対応に遅れがあったとの見方を示す専門家は、道路の寸断など地理的な要因の他に、発災後の被災状況を把握するシステムが十分に機能していなかったことに原因があると指摘。各地域が、災害対策をそれぞれの地理的・環境的特性に合ったものへと見直し、被災者を中心に据えて国、県、市町が連携を強化することの必要性を強調しています。

革新的な取り組みが後押しする被災者支援

課題が浮き彫りになる一方、過去の被災者支援では例のない革新的な取り組みが進められています。

道路の寸断や空港の閉鎖といった障害を克服するために動き出したのは、自衛隊と企業の連携による一気通貫の物流システム。支援物資の輸送には、自衛隊のヘリコプターが都市部や海上からの空輸を行い、物流業者が荷さばき倉庫での物資の管理やトラック配送に対応。交通路が閉ざされた最後の避難拠点までは、自衛隊員が物資を配送しました。

また、国内5社はドローンによる捜索や被災状況確認、物資輸送等の初期災害時支援活動を実施。さらに、スタートアップのWOTAは、断水時でも温水シャワーや手洗いを利用することができる自律型の水循環システムが避難所に導入し、最先端のフィルター技術に水センサーとAIによる解析を組み合わせた同システムにより、100リットルの水を約100回再生利用することを可能にしました。

グローバルな災害対策を

約6万人もの犠牲者を出したトルコ南部の大地震から、今月6日で1年が経ちました。町は当時の甚大な被害がそのままに残され、住宅再建の見通しが立たない中、今もなお69万人の被災者が避難生活を強いられています。

自然災害のリスクは特定の都市、地域、国に限った課題ではありません。世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2024年版」は、今後10年間に世界が直面する最大のリスクは異常気象であると警告。気候変動の影響に伴い、激甚化・頻発化する自然災害へのグローバルな対策強化の緊急性を浮き彫りにしています。

また、昨年5月に開催された「仙台防災枠組中間レビュー・ハイレベル会合」においても、防災投資を拡大し、気候変動による災害リスクを効率的に管理していく必要性が強調されました。

世界が足並みを揃え、異なる災害から得られた教訓を統合したより包括的でレジリエント(強靭)な災害対策を講じるためには、官民とNGOの国を超えた連携を強化する必要があるでしょう。同時に、AI(人工知能)やドローンなど進化するテクノロジーを防災・危機管理や被害状況の把握、被災者支援に最大限活用することも不可欠です。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Naoko Tochibayashi, Communications Lead, Japan, World Economic Forum; Naoko Kutty, Writer, Forum Agenda

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