生涯の寄付4730億円、夫が米史上最大のねずみ講に巻き込まれた慈善家の現在

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2009年10月、バーバラ・ピカワーは米フロリダ州パームビーチの自宅のプールサイドで読書をしていた。この年は大変な年だった。前年の12月にバーニー・マドフが被害総額640億ドル(現為替レートで約9兆6000億円)のねずみ講という米史上最大の金融犯罪で逮捕・起訴され、バーバラの夫ジェフリーはこの事件に巻き込まれていた。ジェフリーはこの犯罪で、マドフ含む他の誰よりも多くの利益を得ていた。

67歳で死去した会計士で弁護士だったジェフリーは、20年以上にわたってバーナード・L・マドフ証券から他の投資家の資金約72億ドル(約1兆800億円)を引き出していた。長年投資を行っていたジェフリーは、静脈点滴ポンプメーカーのアラリス・メディカル・システムズなどの企業に資金を投入し、さらに数十億ドルを稼いでいた。同社は2004年にカーディナル・ヘルスに20億ドル(約3000億円)で買収され、その際ジェフリーは10億ドル(約1500億円)を手にした。

当局はジェフリーの財産から数十億ドルを回収しようとしていたが、問題はそれだけにとどまらなかった。ジェフリーは心臓病とパーキンソン病を患っていた。結局、限界だった。バーバラが本から目を上げたとき、ジェフリーはプールの底に沈んでいた。

心臓病による不慮の溺死だった。それから1年ほど経った2010年12月、バーバラは他の投資家の資金だった72億ドルを返還することで連邦検察当局と合意した。その際、バーバラは「夫のジェフリーはマドフの詐欺に絶対に加担していないと確信している」と述べた。バーバラは本記事の取材を断っている。

ジェフリーの遺言に従ってバーバラは2011年にJPB財団(JPBはジェフリー・ピカワー・バーバラの略)を設立。医療研究などに資金を提供すべく、慈善財団に寄付するための2億5000万ドル(約375億円)超を集めた。一家にはたっぷり金があった。バーバラには2億ドル(約300億円)、娘には2500万ドル(約38億円)、ジェフリーの長年にわたるアシスタントには1300万ドル(約20億円)が贈与されることになっていた。

ジェフリーの遺産は他にも数十億ドルあることが判明した。2022年までの十数年間で、バーバラはジェフリーの遺産から42億ドル(約6310億円)をJPB財団に振り向けた。入手可能な直近の税務申告によると、同財団の資産は2022年末時点で41億ドル(約6160億円)だった。

現在81歳のバーバラは、生涯の寄付額がフォーブス推定で31億5000万ドル(約4730億円)と、米国の寄付額ランキングでトップ25に入る慈善家の1人だ。
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翻訳=溝口慈子

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