国内

2024.02.29 14:45

「貿易赤字1.8兆円」のメドテック。それでも日本が世界で勝てる理由

Forbes JAPAN編集部
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世界で戦える町工場の「ものづくり」も

審査会が終わり、あらためて中尾に、日本の医療企業が世界で勝つためには何が必要か聞いた。答えは『ものづくり』だった。

「この前、足立区にある中小企業を見に行ったんです。そこは米国の有名医療機器会社の製品のコンポーネントをOEM製造しながら、自社でも製品をつくっている。どの製品も品質が良いから、その米国企業からの発注が途切れないそうですよ」

こうしたOEMで、海外メーカーに卸をしている中小企業はたくさんあるという。そうした企業が自社でも製品を売っていくことで「経営力は強固になる」と中尾は強く期待する。スタートアップに限らず、町工場からも世界で戦える企業が生まれる可能性は十分にあるのだ。

日本のGDP(国内総生産)は伸び悩み、まもなくドイツに抜かれ4位に転落する見通しだが、振り返ると「日本は、70年代から医療企業や自動車メーカーなどが海外進出をしていき、経済成長をもたらしました」(中尾)。

いまこそ、新世代の医療企業が世界に飛び出すことで、医療産業だけでなく日本経済の復活を手繰り寄せるときだ。

審議会メンバー

中尾浩治 日本バイオデザイン学会特別顧問 (ファウンダー)

慶應義塾大学法学部卒業、早稲田大学大学院先進理工学研究科生命医科学博士。医療機器メーカーのテルモで営業からM&Aまで手がける。2016年に代表取締役会長および日本医療機器産業連合会会長を退任。15年、東北大学、東京大学、大阪大学にバイオデザイン(MedTechイノベーションプログラム)を導入。現在は、受講生・修了生にメンタリングやMedTech企業/ベンチャーの社外取締役およびアドバイザーを務める。

内田毅彦 サナメディ代表取締役

内科・循環器科専門医。ハーバード公衆衛生大学院修士・ハーバード経営大学院GMP修了。医薬品医療機器審査センター(現PMDA)・日本医師会での勤務を経て、日本人として初めて米国食品医薬品局(FDA)医療機器医学審査官を務める。医療機器大手Boston Scientific米国本社、米シリコンバレーでの起業を経て、2012年日本医療機器開発機構(現サナメディ)を設立。医療機器のインキュベーション事業を手がける。

小野稔 東京大学大学院医学系研究科 心臓外科学教授

東京大学医学部卒業。東大医学部附属病院医工連携部部長、東大臨床生命医工学連携研究機構教授などを歴任。厚生科学審議会専門委員、薬事・食品衛生審議会委員、 PMDA専門委員、 日本移植学会理事長、日本バイオデザイン学会代表理事、日本心臓血管外科学会常務理事、日本人工臓器学会副理事長、日本コンピュータ外科学会副理事長、日本外科学会理事を務める。2012年に天皇陛下(当時)の心臓手術を率いた。

上村みどり 情報計算化学生物学会(CBI) 研究機構量子構造生命科学研究所所長

X線結晶学、構造生物学を専門とし、日本学術会議連携会員、文部科学省ライフサイエンス委員会委員、文部科学省研究開発基盤部会委員、国立医療研究開発機構研究・経営評議会委員、科学技術振興機構未来社会創造事業共通基盤領域運営委員、理化学研究所生命機能科学研究センター国際AC、日本結晶学会評議員、CBI学会評議員などを数々のポジションを務める。帝人ファーマ生物医学総合研究所上席研究員を経て現職。

文=露原直人 写真=佐々木康

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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