白武ときお、「面白いもの」を見つけるための4つのルート

Forbes JAPAN編集部
現在の自分をかたちづくってくれているのはこれらの3つ。しかし思い返してみると、そもそも自分の好みをかたちづくったのは4つ目の「他人の推薦ルート」だ。子どものころには母親が「面白いアニメが始まるらしい」と、『名探偵コナン』(1996年から放送)や『ONE PIECE』(99年から放送)の放送開始日にはチャンネルを合わせてくれたし、父親からは村上春樹の本を貸してもらった。

小学生の時には好きな女の子に『学校へ行こう!』(TBS系列)を教えてもらってテレビに熱中するようになり、中学の友達には「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日本テレビ系列)の「笑ってはいけないシリーズ」のDVDがレンタルできることを教えてもらい、ダウンタウンにハマった。高校生の時には恋人に『ライ麦畑でつかまえて』(JD・サリンジャー)を貸してもらって、本格的に読書にのめり込んだ。

何も知らないところから、他人の推薦があって自分の趣味嗜好、ルーティンがつくり上げられてきたのだった。現在は33歳になったが、それでもまだまだ触れていない新しい領域や作品があると思う。インターネットのリコメンド機能に頼るのもいいが、ルーティンから外れることも大事にしたい。本当は大好きになれたかもしれないものを逃してしまうのがもったいないと思ってしまう貧乏性だ。

今、「人」が面白い?

今回、座談会やインタビュー企画でいろいろな人に「今面白いもの」を聞いて、なんとなく浮かび上がってきたキーワードが「人」だった。「生身の人間が行うこと」が面白い、「人と人が出会うから生まれること」が面白い。それから、「そんな変な活動をしている人がいるんだ」というところに面白みを感じる人もいた。

僕自身は、そういうものにあまり興味がないというのも再認識した。「新規性」「構成」「アイデア」などが脳みそから生み出されたところを「面白い」と思いがちで、それを人間がやっているかどうかや、リアルな体験かどうかには目がいかない。「これは今までになかったな」「よくこれ思いついたな」というひらめきや、“面白い賢さ”にしびれる。

僕は大体家にいて、音楽もお笑いも映像で見ることが多い。それに、なるべく気心の知れた人としかコミュニケーションをとらないので、かなり「人離れ」している。趣味嗜好のルーティンから外れるためにいろんな“おすすめ”を聞いている友達も、ルーティンの一部となっている始末。仕事でも、漫画の原作や児童書作品など準備しているところで、あまり人に会わなくていい方向に向かっている。

2023年はコロナも落ち着いてきて対面会議が復活した年だった。リモート会議は楽だが、対面でないとクオリティが下がるプロジェクトはある。膝を突き合わせるからこそ、雑談からアイデアが生まれ、だらだらと話すことで解決方法を思いつけることもたくさんあった。

なので、僕も24年は楽をせずに、意識的に新しい人と会っていきたい。今回出てくださった皆さんのように「人間って面白いな」と気がつけるのか、はたまたやっぱり家にこもって本や映画にたくさん触れていたほうが良かったなと思うのか、検証してみたい。


白武ときお◎1990年生まれ、京都府出身。テレビ、YouTube、ラジオ、デジタルコンテンツ、雑誌、広告などジャンルを問わず越境する放送作家。担当番組は「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」など。著書に『YouTube放送作家お笑い第7世代の仕掛け術』(扶桑社)。

文=白武ときお

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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