ライフスタイル

2024.02.04 15:00

異国の友が教えてくれた「私らしさ」

Forbes JAPAN編集部

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。

THE GIFT #8

森本 卓

DM三井製糖ホールディングス 代表取締役社長CEO

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勇壮で華麗なアロワナの姿が、ヒレやウロコまで繊細に表現された盾。
気品ある銀色の輝きが美しい。
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執務室には、私の背中を見守る魚がいる。魚といっても、銀色に輝くアロワナのプレートだ。贈り主はインドネシアの企業グループ CT Corpの創業者、ハイルル・タンジュン総裁である。インドネシアでは、アロワナは竜に見立てられ幸運を呼び込む魚とされている。2020年3月、前職の三井物産アジア・大洋州本部長を退任する際に「モリモトさんのように、オープン・マインドとオープン・ハートのふたつをもっている人はあまりいないよ。これはきっと次の仕事にも幸運をもたらすからね」という温かい言葉とともに頂戴した。

彼は、苦学生だった大学在学中に学内ビジネスで学費と生活費を賄いながら、卒業後に起業。大手財閥グループCT Corpを一代で築き、経済担当調整相まで務めた立志伝中の人だ。一方、グループ企業のストアを視察に行けば、買い物客からのスマホ撮影の要望にも気軽に応じる。そう、私にオープン・マインドとオープン・ハートの姿勢を示してくれたのは、ハイルルさんご本人であるのだ。

そんな彼から贈られた銀色のアロワナは、当社の企業理念「幸せのちからになる」を執務室から支えてくれている。


もりもと・たく◎1957年、京都府生まれ。81年に早稲田大学商学部を卒業後、三井物産入社。米国、サウジアラビア駐在などを経て2019年三井物産副社長執行役員アジア・大洋州本部長。20年三井製糖へ。代表取締役副社長を経て21年より現職。三井製糖と大日本明治製菓の経営統合にリーダーシップを発揮した。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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