無人機を多用する中国、いつまで日本の空を守り切れるのか

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西側諸国の「支援疲れ」が指摘されるなか、ウクライナ軍は現在もロシアによる侵攻に耐え続けている。航空自衛隊の元幹部は「曲がりなりにも、ロシアに航空優勢を取らせなかったことが大きい」と指摘する。ロシア軍は2022年2月の侵攻当初、ウクライナの防空システム破壊に躍起になり、航空優勢の奪取を目指したが、欧米の支援を受けたウクライナ側が撃退した。2年近くも一進一退の攻防が続く背景のひとつには、両軍ともに航空優勢を取れていない状況がある。

「ウクライナの空を人ごとだと思ってはいけない」と元幹部は語る。日本の空の守りも年々厳しくなっているのが実情だという。防衛省自衛隊統合幕僚監部によれば2023年度上半期(4~9月)の空自機による緊急発進(スクランブル)回数は424回(中国機に対し304回、ロシア機に対し110回、その他10回)だった。統幕は「2013年度以降の上半期の実績は約300~600回程度を推移し、引き続き高い水準にある」としている。

なかでも最近目につくのが、無人機に対するスクランブルだ。23年度上半期だけで6回を数え、最多だった22年度の8回を上回る勢いだという。無人機は推定も含めればいずれも中国機で、東シナ海から台湾と与那国島の間を抜けて太平洋まで往復する飛行が目立つ。元空自幹部は「ここ数年、中国軍による無人機を使った偵察行動が目立つようになってきた」と語ると同時に、「有人機と違い、無人機への対応には、色々と課題がある」と指摘する。

無人機は一般的に戦闘機に比べて低速だ。この問題は、スクランブル発進をかけた空自のF15戦闘機などが旋回しながら、無人機を追尾することで解決できる。困難なのは「呼びかけ」だという。空自機は無線を使って、日本の領空に近づいているとして警告し、退去を求めることになるが、無人機が過去、こうした警告に「反応」した例はないという。

元幹部によれば、無人機ではないが数年前、自衛隊が大騒ぎになる事件が起きた。当時、インド太平洋地域の国に所属する民間の軽飛行機が日本の領空に近づいた。緊急発進した空自機が接近すると、操縦士が操縦席で前のめりになってうつぶせのような状態になっている姿が確認できた。急病などで失神したか死亡したとみられた。ただ、軽飛行機はどんどん日本の領空に近づいていく。速度と残燃料を計算したところ、北海道で燃料が尽き、墜落する可能性があることがわかった。
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文=牧野愛博

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