細胞培養を自動化 英バイオスタートアップ、新薬開発の加速化目指す

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生物学者は、遺伝子を操作したり、細胞をプログラミングしたり、新しいワクチンを数カ月で開発したりできる。しかし、細胞培養などの基礎的な研究手法の手順は、過去数十年に渡ってほとんど進化していない。病気の原因究明や治療法の開発のための細胞培養は、いまだに手作業で行われているのが現実だ。

「細胞培養は時間がかかるプロセスで、週末も作業に追われることになるため、生物学者たちは嫌っており、得意でもない」と、ロンドンを拠点とするバイオテクノロジーのスタートアップMytos(マイトス)の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のアリ・アフシャール(Ali Afshar)は話す。手作業は、コンタミネーション(汚染)や再現性の欠如などの問題にもつながり、基礎研究と医薬品開発の足を引っ張ることもある。。

アフシャールは、これらの課題の解決を目指してマイトスを設立した。同社は、生物学者が研究に集中できるように細胞培養を自動化するシステムを開発した。同社の自己完結型細胞培養装置は、シンプルな流体システムによって容器への栄養分の添加や細胞数のモニタリングを自動化している。

物理学者のアフシャールは、インペリアル・カレッジの博士課程に在籍中、研究に没頭できるように研究室での作業を自動化する方法を開発した。彼は、経営学の学位取得を目指していたイグナシオ・ウィラッツ(Ignacio Willats)と出会い、研究室における作業の自動化にビジネスチャンスを見出した。製薬会社に接触した2人は、細胞培養の自動化に大きなニーズがあることを発見し、2018年にマイトス(当時の社名はCytera Cellworks)を設立。同社は、アクセラレータープログラムのYコンビネータに採択され、ビジネスモデルに磨きをかけた(2人は2019年、フォーブスが30歳未満の若手を表彰する「30アンダー30」欧州版に選出された)。

マイトスは先日、Buckley Venturesが主導し、Wing VCとIQ Capitalが参加したシリーズAラウンドで1900万ドル(約27億円)を調達したことを明らかにした。
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編集=上田裕資

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