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2023.11.19 12:30

Activ8大坂武史の偏愛漫画『Dr.NOGUCHI 新解釈の野口英世物語』|社長の偏愛漫画 #17

Forbes JAPAN編集部
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栗俣:反骨精神は強い描かれ方がされてますもんね。印象的なシーンで、アメリカに行くときに、極端にお金をもたないで「オラ、もうギャンブルで生きてきたんだから、アメリカに何一つもたずに行くんだ」と言うシーンもあります。そういう思い切りの良さがある。「何も自分はもってないけど、行ってどうにかできるんだ」みたいな気持ちのもち方も、ほかの人がもっていない部分かもしれないですよね。

大坂:そうですね。会津の田舎から都会に出て医者になることも、アメリカに行くことも、彼の心情としては、ハードルの高さがあまり変わらなかったかもしれない。逆に何ももたないということが、彼の戦略として合理的だった可能性すらありますよね。 
©むつ利之/講談社

©むつ利之/講談社


栗俣:野口の生きた時代は、海外に行く、都会に出るといったいろいろな行動を自分から起こすことに対するハードルが、今とは比べ物にならないぐらい高かったはずです。野口は自分が死ぬことも顧みず、目的のためなら動いてしまう。漫画の中では「前を向け」「前を向け」と表現されていましたが、進むことを臆さない。それが野口英世という人を作ったのかなと、思いますよね。

一方で、野口のビジネス的な部分で、まわりの人から臆さず協力を仰ぐ。どんな偉い人にでもすぐ話しに行くし、自分が出会うはずのない人にも会いに行く。たぶん、実際は運ではなくてすごく努力していろいろな人と出会っていくんですよね。

大坂:確かに要所で重要人物に手を差し伸べられている。拾う神がありつつ、野口自身の実現したいという気持ちで切り開いているのかもしれない。「どうせできない」とか「あきらめよう」とか「緊張するな」なんて思っていない。実際に行動を起こす人と起こさない人って、本当にわずかな差で、行動するほうに傾くか傾かないかだけ。野口英世の場合は、常に動くほうに行くんでしょうね。

野口は運もいいと思いますが、本気で何かを追い求めて、チャンスがあったときに動く心の用意ができている。そういった目の前のチャンスが普通は見えない。追い求めてない人には見えていない機会が、彼にははっきりと見えている。普通の人であれば機会が見えたとしても、あきらめがちなことでも野口は一歩踏みこむんでしょうね。そういう積み重ねが大事なのだと思います。ただし、人に助けられているというのは間違いない。野口一人の偉業ではないですね。

栗俣:Kizuna AI(キズナアイ)が生まれた当時、バーチャルアイドルはイメージもつかないし、「よくわからない」という人たちばかりだったと思います。そんな中でキズナアイを作っていくのは、野口英世がまわりの協力も得つつ、新しいことに向かっていく様子と似ています。その時はいかがでしたか。
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インタビュー=栗俣力也 文=荒井香織

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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