中心静脈カテーテルの感染を予防する新薬を、FDAが承認

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入院患者、特に集中治療を受ける患者には、しばしば「中心静脈カテーテル」(CVC)が使用される。これは心臓に近い静脈に挿入され、患者の回復に必要な薬剤や液体を供給するためのチューブだ。このような中心静脈ラインはしばしば長期間(状況によっては最長1年)の留置が必要となるため、無菌状態を保つことが難しい。そこから感染が発生することもよくあり、コストがかかり、死に至る可能性もある。米国保健福祉省の推定では、このような感染症は年間8万4000件〜20万4000件発生しており、それに関連する死亡は2万5000件にのぼり、医療システムにかかる費用は年間210億ドル(約3兆2000億円)にもなるという。

そこに登場したのが、ニュージャージー州に本社を置くCorMedix(コアメディックス)だ。同社は、中心静脈ラインが使用されていないときに注入することで感染を防ぐことのできる薬液を開発した。第3相臨床試験では、同社のDefenCath(ディフェンキャス)「カテーテルロック溶液」が、標準治療と比較して感染リスクを大幅に減少させることが確認された。

米国時間11月15日、FDA(米国食品医薬品局)は腎臓透析を受けている患者に対するDefenCath使用を承認した。これによりCorMedixは製品化計画を進めることができる。CorMedixのジョー・トディスコ最高経営責任者(CEO)は『Forbes』の取材に対し、同社は現在、メディケアやメディケイド(どちらも米国の公的医療保険制度)と、この製品がどのようにカバーされるかについて、最終的な協議を行っている最中で(ほとんどの透析患者はメディケアに加入している)、2024年第1四半期末までに市場へ最初の出荷ができることを期待していると述べた。「私たちは数カ月にわたって彼らと協議を続けてきました。なので必要な情報は全て揃っていると思います」と彼はいう。

DefenCathは2種類の薬剤で構成されている。1つ目はヘパリンで、これはカテーテルが使用されていない時に一般的に用いられる抗血液凝固剤であり、危険な血栓の形成を防ぐ。もう1つはタウロリジンで、これはCorMedixが独自に開発した化学物質であり、幅広い細菌に対して広域抗菌剤として作用する。

FDAへの申請に先立ち、同社は無作為化二重盲検比較試験により本剤の有効性を判定した。合計806人の患者にヘパリン(標準治療)またはDefenCath(新薬)が投与されたが、DefenCathを投与された患者は、コントロール群と比較して感染率が大幅に低かった。これは約71%のリスク減少に相当し、重大な安全性問題は認められなかった。

トディスコは「これを実際の世界でも再現できれば、医療コストへの影響だけでなく、発生率と死亡率を減少させることで、業界に大きな影響を与える可能性があります」と述べた。

米国時間11月15日に、CorMedixの株価は6%以上上昇し、終値は3.33ドル(約504円)となった。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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