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2023.12.13 11:30

「ラーメン専用稲」で作った1杯に行列。秋田男鹿市の塩麺を一風堂が監修、なぜ

石井節子
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採用基準は「ウチで働いて、今より幸せになる人」


まちに賑わいを生み出すためにさまざまな仕掛けをつくり続ける岡住さんの元には、多くの人が集まってくる。しかし、お店を開くために人を雇うという訳でもないのだという。

今は正社員が15名、男鹿出身者より、秋田県や他県の都市からの移住者がほとんどだ。移住をしたいというより、稲とアガベで働きたいから男鹿にきたというメンバーばかり。その中で、お酒であったりお店であったりと一緒に男鹿で新しいものをひとつずつ作りながら仲間をつくってきた。

『SANABURI FACTORY』で出迎えてくれた齋藤梨奈さん。1週間前に男鹿に引っ越してきたばかり、秋田出身でお酒が好き、稲とアガベのお酒と出会って一緒に働きたいと思ったと笑顔で話してくれた

『SANABURI FACTORY』で出迎えてくれた齋藤梨奈さん。1週間前に男鹿に引っ越してきたばかり、秋田出身でお酒が好き、稲とアガベのお酒と出会って一緒に働きたいと思ったと笑顔で話してくれた


「採用基準は、まずはニコニコできるかどうか、僕ができないんで(笑)。基本的に代表の僕がやりたいことを一緒に実現していく。その先を見据えた時に、この人はうちの会社に来たら、今よりも幸せになるなっていうのが採用基準です」

男鹿で普通に暮らす人たちの雇用を生む。生活や人生が豊かになる人を、ひとりずつ、淡々と増やしていくために、稲とアガベの仲間たちは進んでいく。「その先に世界があって、もし世界に出ないと実現しないことなら出るかもしれない」と、少し強い目をして笑う岡住さんは続けてこう話す。

「地元のおじいちゃんとかおばあちゃん雇って、この仕事のおかげで孫にプレゼント買えたよ、って言ってもらえたら、僕がいる意味があるかな。次に作る工場や施設は、地元のおばあちゃんとかいっぱい雇用できるといいなとか。まあ今時点、立ち上げ期は多少チャレンジ精神のある人が集まってくるものなんでまた違うかもですが。次どういう人たちを雇おうって、そういう夢を見ていますね」

その採用基準は、決してゆるいわけじゃない。いつも強い風が吹く、冬の寒さやアクセスの難しさなど、この土地の試練にも負けず根を張り、さらに豊かに暮らしていくことを目指し続ける。それを覚悟とかではなく「男鹿に住むこと」として受け入れる岡住さんたち、彼らのような人であることかもしれない。

稲とアガベ

Photo::菅野証 Sho SUGANO

(本記事は「読むふるさとチョイス」からの転載記事です。)

文=畠山美咲

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