メカニズムを理解し、実装せよ!日本の地方はブロックチェーンで強くなる

Forbes JAPAN編集部
このポルカドットのもつ分散的な意思決定のメカニズムを、例えば日本の大企業のトップが仕組みを理解して、企業の意思決定のメカニズムや従業員に対する報酬の設計へ応用する。現状、企業では在籍年数に応じて昇進し、意思決定ができる立場になりますが、社員が会社へのコミットメントをステーキングのようなかたちで示すことで、意思決定に参画できるという仕組みをつくったらどうか。年代を問わずにコミットメントの量に基づいて、フェアな報酬を生むかたちで意思決定の権限を与えることができます。

このように、ブロックチェーン技術のもつトレーサビリティ、透明性の担保やWeb3.0における分散性といった特徴を応用して、日本人が日本人に合う報酬設計を生み出すというのは、ひとつ考えられそうです。

そしてこのWeb3.0型の分散的な意思決定、「みんなで決めましょう」というメカニズムは、欧米では日本ほど使いこなせないかもしれないと感じています。海外の企業でマネジメントを務めてわかったのは、海外はちゃんとマネジメントしないと人が動きません。しかし日本は、自律的に社員が仕事をします。これは、実は驚異的なことです。目的意識をもつ集団に自律性を求めるという点において、日本はほかの国よりも極めて優位にあります。そして、人々がいいと思ったモノ・コトがあればみんなそちらへ動いていくというように、マジョリティさえ動けば一気に新しいシステムへ移ることができるのも、日本の特性だと思います。

そのような日本人のもつ自律性やフレキシビリティは、ブロックチェーン技術やWeb3.0と相性がいいと感じます。うまくやれば、日本人がこの30年の間もち続けている不安を、自分たちが自律的に行動していくことによって解消していけるのではないか。私はそこに、将来の可能性を見ています。

ポルカドットとは何か

ポルカドット(DOT)

暗号資産の取引所や分散型プロトコルで売買できるトークン。「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる合意形成メカニズムをもとに、ネットワークの安全を担保するほか、トランザクション(処理)を検証する。「ステーキング」は、保有者が投じたい資金や時間、専門知識などに応じて複数の方法がある。また、従来のブロックチェーンとは異なるいくつかの特徴をもつ:

・異なるブロックチェーン間で運用ができる

・誰でもブロックチェーンを開発できる

・スケーラビリティ(拡張性)問題が起こりにくい

・セキュリティ面で今までよりも堅牢性が高い

・オープンガバナンス体制で運営されている

異なるブロックチェーン間で運用できる「ポルカドット・プロトコル」を構想したギャビン・ウッド博士は、ブロックチェーン基盤であるイーサリアムの生みの親でもある。彼はヴィタリック・ブテリンらとイーサリアムを創設したのち、ブロックチェーン技術を開発するParity Technologiesを創業。同社と、やはりウッドが創設したWeb3財団とで、「Polkadot Protocol(ポルカドット・プロトコル)」を発表した。ウッドが名付け親となった、分散型の「Web3.0」の世界を実現するため、ブロックチェーンが混在する「合意のインターネット」を目指している。


デジタルプラットフォーマー◎2020年創業、ブロックチェーン技術開発企業。分散型ID・VC(Verifiable Credential)の発行・管理サービス、デジタル通貨発行・管理サービスを地方自治体や金融機関へ提供。世界初の実運用CBDC(カンボジア)で採用実績のある「ハイパーレジャー・いろは」を基盤に「LITA」を開発。北國銀行と共同でステーブルコインの発行を目指している。

文=加藤智朗 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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