経営・戦略

2023.08.10 07:30

白衣で創業15年 医療アパレル「クラシコ」が新市場開拓を成功させた3つの鍵

督 あかり
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──世界展開の現状と今後の展開は。

現在、アジアでは台湾と中国、中東では湾岸協力会議への加盟6カ国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート)で販売しています。

大きな市場はサウジアラビアで、唯一現地の代理店と組んで販売しています。品質、素材、縫製のクオリティが他国の競合に比べ、圧倒的に良いと評価をいただいています。

ただでさえ高価格帯の商品です。輸入でさらに値段が高くなる中で、メディカルアパレルのエルメスと呼ばれるくらい「高いけどすごくいい」と言われています。SNSでも人気のようです。


サウジアラビアの医療アパレル店「Dr.Lounge (R)」のSNS投稿。クラシコの白衣を紹介している

今後の展開については、会社のミッションにあるようにグローバル展開をさらに強化していきたいです。目下では、アジアを中心に展開しています。

中国は特に力を入れています。10年以上前から中国市場のリサーチをしてきましたが、かつて中国は収入面でもファッションの面でもまだ成熟していなくて、太くてどかっとした白衣がかっこいいというような、日本とは逆の文化がありました。

しかし、ここ数年で中国市場が成熟し、さらに美容整形がブームになって病院が立ち上がるなど、お洒落な白衣が必要だというニーズがあります。コロナが明けて、中国版TikTokの抖音(Douyin)でECサイトを開いたり、商品販売を積極的に行っています。

──市場のないところから生み出す挑戦が成功した鍵を教えてください。

新市場開拓に成功、3つの鍵

1. D2Cブランドである
2. 素材開発を続けている 3. 独自性に磨きをかける




1. D2Cブランドであること:医療ユニフォーム業界ではエンドユーザーと繋がり、お客様の声を直接聞いて商品を作るということがありませんでした。私たちはその中でD2Cから始めたことが、成功に繋がりました。ドクターの声を聞いて理想の白衣を作ると、従来品の何倍の値段でも欲しいと言っていただける。常にお客様の声を聞きながら改善していけるというのも大きなポイントですね。

2. 素材開発を続けていること:独自の機能性、デザイン性を持った素材を糸から開発し、その手法を常にやり続けているというのが強みです。他の大手アパレル企業のメディカルアパレル参入はありますが、撤退かローペースがほとんど。それはいざやってみても素材の耐久性をクリアするのが難しいことが多いのではと思います。だからと言って数年かけて医療用の素材開発をするかと言うと、そこまではやらない。なのでうちが会社一丸となって素材開発をしているという点は重要だと思います。

3. 独自性に磨きをかけること:閉鎖的な医療業界で独自の立ち位置を続けることで、他の会社が医療業界に参入する時の「入口」にもなっていると感じています。そういった会社とも手を組みながら新しいお客さんが増えているのも、大きな強みだと考えています。

──いまの医療アパレル業界で、御社に求められていることについてお聞かせください。

世界中どこの国でも必ずドクターがいて、ナースがいる。その上で、どの国でも医療現場の過酷な環境は昔から大きく変わりません。

クラシコも15年やってきて、日本でもおしゃれな白衣を着るお医者さんは増えましたが、病院の環境が15年前と劇的に変わったかと言われれば、まだまだ変わっていない。

医療現場で使命感を持って働く医療従事者の働きやすさを改善したり、患者さんの満足度を上げたり、メディカルアパレルの視点でアプローチするのは意義のあることだと思います。

医療業界を人間の感性や体験価値の視点で変え、世界中に広げていく。それが会社のミッションであり、求められていることだと思います。


大和新◎クラシコ代表取締役CEO。1980年、栃木県出身。立命館大学卒業後、IT関連企業の営業や事業開発を経て、友人医師のペラペラでクタクタの白衣ではモチベーションがあがらないという言葉から、差別化できるかっこいい白衣を作ろうと決意。高校の友人であり、カッターとして銀座のオーダーサルトで経験を積んでいた大豆生田伸夫(おまめうだ のぶお/現・取締役兼デザイナー)を誘い、2008年、リーマンショックが起きた年に開業資金5万円で「Classico(クラシコ)」を創業。

文=椿ことね 編集=督あかり 写真=クラシコ提供

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