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2023.07.19 10:30

異常気象で株式市場に暗雲 米証券大手が警鐘

遠藤宗生

米カリフォルニア州デスバレーに掲げられた高温注意の看板(2023年7月15日撮影、David McNew/Getty Image)

7年ぶりに発生したエルニーニョ現象による異常気象は世界の株式市場の活況に水を差しかねない──。米証券大手チャールズ・シュワブは今週、そう注意を促した。異常気象という材料はあまり検討されていないが、物価を再び高騰させる可能性があると指摘している。

チャールズ・シュワブのチーフグローバル投資ストラテジスト、ジェフリー・クレイントップは17日のリポートで、世界各地で記録されている最高気温やカナダの山火事といった異常気象はエルニーニョ現象によって近く拍車がかかることが予想されると説明。そのうえで、異常気象による経済的影響は「インフレと経済活動のいずれに関しても重大なものになりかねない」との見方を示した。

クレイントップは「気象がマーケット全体に大きな影響を及ぼすことはめったにない」としつつ、今回はまさにその例外的な事態になる可能性があるとみている。

理由は、インフレに対する株価の感応度が高くなっていることがひとつ。もうひとつは、農産物の収穫量の落ち込みが懸念されたり、冷房の使用で電力需給が逼迫したりするなか、食品・エネルギー価格を中心に物価上昇が見込まれることだ。

ここ数年、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)や、ロシアがウクライナに対して起こした戦争の影響で、物価は高騰した。ウォール街では、ここへきてようやくインフレが沈静化したとの判断から、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする中央銀行が利上げを抑制することへの期待感が広がっている。

クレイントップによると、前回エルニーニョ現象が起きた2015〜16年にS&P500種株価指数は最大15%下落した。ただ、この下落は長くは続かず、気象が直接の原因ではなかったとも考えられている

S&P500は年初から約20%上昇し、構成銘柄の4割超は2桁の伸びを記録しているだけに、仮に2015〜16年のような下落が起これば大きな波乱になる。

エルニーニョは、中部太平洋の赤道域から南米沿岸にかけての海面水温が平年より高くなる現象。世界気象機関(WMO)は今月4日に新たな発生を宣言した。米国立海洋局(NOS)によると、米国ではその影響で南部では降水量が増え、北部では気温が上がる傾向にある。

米銀大手モルガン・スタンレーによると、気象災害による世界経済の損失額は2017〜19年の3年間で6500億ドル(約90兆円)に達している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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