EV電池に参入の韓国化学メーカー「クムヤン」CEOがビリオネアに

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スニーカーに使われる化学発泡剤を製造する韓国企業クムヤン(Kumyang、錦洋)は昨年、注目の電気自動車(EV)向けのバッテリービジネスに参入した。テスラやリビアンなどのEV関連銘柄への投資家の強い需要を背景に、同社の株価は急騰し、柳光志(リュ・クァンジ)最高経営責任者(CEO)を最新のビリオネア(保有資産額10億ドル以上の富豪)に押し上げた。

現在57歳の柳は、韓国のコスダック証券取引所に上場するクムヤンの筆頭株主で、時価総額が約50億ドルの同社の株の40%近くを所有しているが、持ち株の90%近くを個人融資の担保としている。フォーブスはそれを考慮して柳の資産を算定し、7月11日の終値で柳の資産が10億ドルを突破したと見積もった。

クムヤンは何年もの間、目立たない企業だったが、2022年半ばにEVに使われる充電式リチウム電池の開発研究を完了したと発表したことで注目を集めた。以来、バッテリー関連銘柄を求める投資家が殺到した結果、クムヤンの株価は2000%近く急騰した。

同社はまた昨年末、コンゴのリチウム採掘プロジェクトに最大1900万ドルを投資すると発表した。

しかし、クムヤンがEVバッテリー分野での実力を証明するためには、長い道のりがある。釜山に本社を置く同社は、現状では発泡スチロールの製造に使われる発泡剤の製造でほぼ全ての収益を得ており、昨年の第1四半期に23億ウォンの利益を計上した後、今年の第1四半期には、27億ウォンの赤字に転落していた。売上高は380億ウォンで、前年同期から30%の減少だった。

柳は1998年に財務部長としてクムヤンに入社し、3年後にCEOに就任した。高麗大学で法律の学位を取得した柳は、同社に入社する前、かつてジョージ・ソロスの支配下にあった証券会社のソウル証券(現在のユージン投資証券)に勤務していた。

今年に入り、EV用バッテリーの需要急増を背景に、別の韓国の化学企業もビリオネアを輩出した。化学メーカー、エコプロ(EcoPro)の株価は年初から800%近く急騰し、創業者で会長の李東彩(イ・ドンチェ)の保有資産は10億ドルを突破した。同社の子会社であるエコプロBMは、EVバッテリーに使用するカソード(正極)を生産する韓国最大の企業として知られている。

また、2021年には、別の韓国のEVバッテリー関連企業がビリオネアを生み出していた。リチウムイオン電池用の化学薬品を製造するチョンボ(Chunbo)の創業者で共同CEOのLee Sang-ryulだ。同社の株価は2021年の年初来の9カ月で40%近く上昇し、Leeはビリオネアの地位を獲得した。しかし、その後は株価がピーク時のほぼ半分になり、現在はその地位を失っている。

韓国は、EV用バッテリー分野で複数の世界的大手を生み出している。世界のEV用バッテリーの約4分の1は、サムスンとLG、そしてSKの韓国の3大財閥の傘下の企業で生産されている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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