日本人は何を達成するために「働き方をリデザイン」するのか

ベストセラー『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』や『LIFE SHIFT 2(ライフ・シフト2)』の共著者で、ロンドン・ビジネススクール経営学教授のリンダ・グラットン。新刊の単著『リデザイン・ワーク 新しい働き方』(いずれも東洋経済新報社、池村千秋訳)も売れている。

日本で圧倒的な人気を誇る彼女に、働き方のリデザイン(再設計)について聞いた。


──今年1月にスイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加されましたね。教授のセッションは大変盛況だったと聞いています。

リンダ・グラットン(以下、グラットン):いくつかのパネルの司会を務めた。ひとつ目は、ウォルシュ米労働長官(当時)が登壇し、ひっ迫する米労働市場について話した。人手不足は日本にも共通する問題だ。米国では、人々が(医療従事者や小売店員など)フロントラインジョブへの復帰を望んでおらず、50代以上の働き手の数もコロナ禍前のレベルに戻っていない。

また、人工知能(AI)など、テクノロジーとスキルに関するパネルでは、学歴が求人の資格要件に満たない人々が仕事を得るには、どのような研修を行い、どのような方法でテックなどのスキル習得を認定すべきか、といった問題を取り上げた。

──「Skills First(スキル・ファースト)」のセッションに、オンライン教育機関「コーセラ」のジェフ・マッジョンカルダ最高経営責任者(CEO)が参加していましたね。彼は教授の新刊にも登場します。

グラットン:コーセラはコロナ禍以降、急成長している。米新興企業「オープンAI」の対話型AI、「ChatGPT(チャットGPT)」など、先端テクノロジーは雇用問題に重要な役割を果たす。ダボスでは、AIが社会に及ぼす影響なども議論した。

──『リデザイン・ワーク』の冒頭に、こう書かれています。「いまグローバルな規模で私たちの働き方が大きく変わりつつある」。この、過去1世紀で最大の「働き方の変化」について説明してください。

グラットン:コロナ禍が、働き方における最大の転機になったのは言うまでもない。日本では、完全出社や長時間労働、長い通勤時間が当たり前だった。だが、コロナ禍で在宅勤務を余儀なくされ、過去の働き方に決別せざるをえなくなった。それを機に、企業は働き方を見直し、従業員は出社や通勤の必要性について考え始めた。

素晴らしい変化だ。コロナ禍が大きなチャンスをもたらしたのだ。

一方、これが10年前だったら、ここまでの変化は期待できなかった。テクノロジーがいまほど発達していなかったからだ。いま、私はロンドンの自宅から、ニューヨークのあなたとズームで話しているが、ほとんどコストがかかっていない。大半の企業にとって、本来なら半年かかるような完全在宅勤務体制が短期間で実現できた。
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インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=ブルーノ・マンギョク

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