2023.06.25

別荘型ホテルで味わう「何もしない時間」という新しい贅沢の形

abrAsus house Fuji 公式写真より

2021年に河口湖で開業した1日1組限定のプライベートホテル「abrAsus hotel」。そのすぐ横に、6月26日に新たにオープンする別荘ホテル「abrAsus house Fuji」。今回のホテルも前回同様、1日1組が富士山の絶景を独り占めできるような設えのラグジュアリーな空間だ。

abrAsus(アブラサス)とは、ラテン語の「削ぎ落とす」と日本語の「油さす」を兼ねたネーミング。その名の通り、このホテルのオーナーであり、デザイナーの南和繁は、元々「薄い財布」でグッドデザイン賞を受賞するなど、従来よりミニマリストなライフスタイルを提案し続けている。

そんな南が、この別荘ホテルを通じ、世に打ち出す新しい時代の「価値」とは─。



デザイナー南が大事にしてきた矜持がある。「既存のプロダクトデザインの常識にとらわれず、ゼロから価値を創造、『欲しい物を形にする』」ということだ。そういう意味で、今回の新しいホテルのあり様は従前のそれとは一線を画す。

現在、マレーシアに住む南は、これまで世界の55カ国を回ってきた。行く先々で豪華と言われるホテルや、その国や地域が誇るデザイン性、機能性の高さを訴求する宿泊施設に滞在してきた。しかし、その中で南が感じたのは、それらの優位性は思い出の中に溶け込んでしまうということ。

実際、振り返ったときに、ラグジュアリーなホテルの様相や景色は写真を見るまで思い出せない。一方、いつまでもビビッドに思い出されるのは、キャンプやグランピングで子供たちと薪を割ったり、玉ねぎをむいたりしたこと、また、その時に話した他愛もない内容など、共同作業した時間そのものだった。これこそが、今回、新たなホテルを作ったきっかけにも繋がった。

(abrAsus house Fujiを手掛けたバリューイノベーション代表取締役/デザイナー 南和繁氏)

(abrAsus house Fujiを手掛けたバリューイノベーション代表取締役/デザイナー 南和繁氏)

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文=谷本有香

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