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2023.06.14 10:00

Xbox Series Xに「性能強化版は不要」 MS幹部が断言

安井克至

Alex Van Aken / Shutterstock.com

前世代の家庭用ゲーム機では、ある「新たな伝統」が生まれたように思えた。世代交代前に、スリム化・低価格化した新型機に加え、性能を強化した新モデルが発売されたのだ。

ソニーは、プレイステーション4(PS4)の発売から3年後の2016年にPS4 Proを発売し、Xbox Oneとの性能差をさらに広げた。対するマイクロソフトがXbox One発売から4年後の2017年に投入したXbox One Xは、PS4 Proを抜いて当時最も高性能なゲーム機となった。

現世代のゲーム機は、すでに発売から3年目を迎えている。ソニーが今年の秋に「PS5 Pro」を発売する見通しはないが、裏では開発を進めていることがうわさされている。

だが一方のマイクロソフトはというと、ソニーに追随する予定はないようだ。同社のゲーム部門を率いるフィル・スペンサーは、ブルームバーグ通信に対し、Xbox Series Xの性能強化版について「絶対必要なわけではないと感じる」と説明。「そうしたフィードバックは今のところ受けていない。今のハードウエアで十分だ」と語った。

スペンサーはこれまでXboxを「最も高性能なゲーム機」としてアピールしてきており、PS5 Proが仮に来年発売されたとすればXboxはその地位を奪われることになるため、今回の発言には反発も生まれた。

だが、この考えは筋が通っている。Xbox Series Xは、この価格帯の製品としては十分な性能を備えている。Xboxの問題は、Series XやSのパフォーマンスや技術面にはない。問題は、Xboxの「ブランド」だ。

マイクロソフトが目指しているのは、人々がプレーしたいゲームのラインナップを充実させ、ゲーム機の売り上げとサブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」の会員を増やすことだ。Xbox Series Xという最も高性能なゲーム機を投入したにもかかわらず、ソニーにまったく太刀打ちができなかったのだから、さらに高性能なゲーム機を開発することは理に適っていない。

一方のソニーには、PS5 Proを開発するべき理由がある。ただし、性能面で首位に立つことは重要ではない。PS5の売れ行きがあまりに好調であるため、市場はいずれ飽和状態となることが予想される。そうなったとき、すでにPS5を所有している人に対して売り込む新製品が必要なのだ。

PS5 Proは性能を若干強化しただけのものになるかもしれないが、それでも人々はこれを欲しがるだろう。そういう筆者も、心の底ではたぶん不要だとわかっていつつも、ほしいと思ってしまう人の1人だ。

というわけで、マイクロソフトとソニーの戦略は、それぞれの市場での立ち位置を考えると、いずれも理に適ったものなのだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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