経営・戦略

2023.02.23 11:00

スピーディー&パーソナライズが鍵。ECとコロナ禍で小売はどうなる?

Forbes JAPAN編集部
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Coresight Research 創業者兼CEO デボラ・ワインズウィッグ

2023年、世界はどのように変わっていくのか。Forbes JAPAN 2月号では、日本、そして世界で活躍するさまざまな業界のNo.1に「100の質問」を投げかけた。国際情勢、テクノロジー、ビジネス、金融などの分野で今年の変化予想を大公開。

今回は世界の小売事情に精通するCoresight Rsearch創業者、デボラ・ワインズウィッグに聞いた。


コロナ禍で店舗営業ができなかった期間に、小売り企業はウェブサイトの開設や「ラストワンマイル」の配送整備など、多くの課題に取り組みました。ラストワンマイル配送は、今後も重要になるでしょう。私が中国に滞在していた際には、ヘアアイロンから洋服まであらゆるものが30分以内で届きましたが、米国はまだこの領域に達していません。

アジアではインフルエンサーを販促にうまく活用している企業が多いですが、欧米はやや後れを取っています。小売業によるNFT参入も盛んで、宝飾品ブランドの米ティファニーが初めて発売したNFT250点は合計1250万ドル以上も売り上げました。

業界にとって今後の大きな課題は、返品率の上昇です。多くの業者は顧客離れを懸念し、(返品なしでの)返金にも応じています。これは持続可能性の観点からも大きな問題で、使用されずに捨てられる不要な商品を多く製造することになります。

昨年、ホリデー・シーズンは品薄が起こりましたが、これはとてもよい傾向だと私は考えます。余剰在庫を抑えることで、小売業者はたたき売りをする必要がなくなり、消費者も「安いから」という理由で買うことが減るため、環境保護にもつながります。

2023年はまた余剰在庫が増える見込みですが、需要の正確な把握にも技術を活用していくことで、よりサステナブルな小売が実現できるでしょう。

無人店舗や店舗で商品を見たあとアプリから注文するような販売形式は、日本と親和性が高いと思います。米国にも消費者が商品をスキャンしながら店内をまわるシステムがありますが、実店舗での買い物を娯楽の一種として楽しんだり、従業員との交流を求めたりする消費者が多く、サービス面の無人化は進んでいません。

過去の購買履歴を活用して買い物中に追加商品を薦めるといったパーソナライゼーションや、万引き対策などに積極的にテクノロジーを生かすべきだと考えます。
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文=菊池友美

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