経済・社会

2023.01.07 08:15

岸田文雄首相の訪米、広島サミット後解散の号砲になるのか

縄田 陽介

Photo by Vachira Vachira/NurPhoto via Getty Images

岸田文雄首相が1月13日、ワシントンを訪れてバイデン米大統領と会談する。日米首脳会談は昨年11月にプノンペンで行われて以来だが、岸田首相にとって2021年10月の首相就任以来、初めてのワシントンだ。22年1月にもワシントン行きを打診したが、当時は米側から新型コロナウイルスへの対応などを挙げて、やんわりお断りを食らっただけに、うれしさも格別だろう。

ただ、今回の訪米は外交政策だけ考えると、それほど大きな意味があるとは思えない。ホワイトハウスの報道官は3日付の声明で、バイデン氏が、日本が改定した国家安保戦略や今年5月に広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)への「全面的な支持を示す」と説明したという。支持をもらうだけなら、首相が別にワシントンまで駆けつける必要はないだろう。

実際、複数の日米関係筋によれば、日本が昨年12月16日に国家安保戦略などを改定したことで、日米が政治レベルで調整する喫緊の課題はないという。関係筋の1人は「新しい日米防衛協力の指針(ガイドライン)を予測する声もあるが、そんな話は全く出ていない。今は、米軍と自衛隊の連携調整で忙しくて、ペーパーをいじっている余裕などない」と語る。別の1人も「ガイドラインは本来、日本に新しい防衛政策をやらせるための布石になるもの。日本が国家安保戦略を改定し、自ら動き出した以上、米国として注文をつける必要はない」と語る。11日には、日米外務防衛閣僚会合(2プラス2)がワシントンで開かれる。現段階では、それで十分だろう。

では、なぜ、岸田首相はワシントンに行きたいのか。かつて閣僚の秘書官を務めた日本政府関係者は言う。「広島G7サミットの後の解散に向けた号砲でしょう」。岸田内閣の支持率はどんどん落ち続けている。日本経済新聞社の世論調査によれば、政権発足以降、最も高かったのは22年5月の66%だったが、その後、7カ月連続で下がり、12月には35%とほぼ半減した。毎日新聞が昨年12月18日に発表した支持率は25%だった。この支持率では、来年9月に任期満了を迎える自民党総裁選で再選される展望が開けない。どこかで解散・総選挙に打って出て、批判が出ている防衛増税などへの「みそぎ」を済ませ、反転攻勢に移りたいと考えているようだ。解散するなら、自民党の議席減を最小限に抑えられる時期が良いと考えるだろう。そうしないと、自民党議員から「自爆解散だ」と反旗を翻され、解散を封じられて内閣総辞職に追い込まれかねないからだ。
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文=牧野愛博

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