ビジネス

2022.08.19

PayPalが出資、「フードスタンプ」特化のフィンテックForageの挑戦

Jonathan Weiss / Shutterstock.com

米国では、毎年4200万人が低所得者向けの食料費補助手当であるフードスタンプ(SNAP)を受給している。SNAPは、25万店以上の小売店で利用できる。しかし、コロナ禍でEコマースや食料品配達の利用が急増しているにもかかわらず、SNAPが使えるオンラインの食料品配達サービスは100社ほどしかない。

この問題に対処するため、サンフランシスコのフィンテックのスタートアップ「Forage」は、SNAPのオンライン決済に対応するソフトウェアを食料品店に提供している。同社は2019年に設立され、現在の従業員数は17名だ。同社は、NYCA Partnersが主導するシリーズAラウンドで2200万ドル(約29.7億円)を調達した。

このラウンドには、PayPal VenturesやEO Venturesのほか、インスタカート創業者のApoorva Mehtaなどのエンジェル投資家も参加し、Forageの評価額は約1億ドル(約135億円)に達した。

Forageの創業メンバーの1人であるAnthony Grullonは、ニュージャージー州パターソンの出身で、彼自身SNAPを受給して育った。彼は、低所得者が食料品の割引を受けられるアプリの開発を思いつき、ペンシルベニア大学ウォートン校に在学中に起業家のJustin IntalとソフトウェアエンジニアのVictor FimbresとForageを設立した。しかし、Grullonはメンタルヘルスに不調を来していた2020年に交通事故に遭い、Forageを去った。

コロナ禍で多くの米国人が食料品配達サービスを利用するようになると、共同創業者の2人は、食料品割引よりも先に解決すべき問題に直面した。それは、オンラインデリバリーでSNAP決済に対応した小売店がほとんどないということだった。彼らは、SNAP決済におけるストライプ(Stripe)のような存在になることを目指し、事業転換を図った。その過程で、Intalは自身が会社を率いるのに適していないと考え、2022年春に会社を去った。Fimbresは、CTO(最高技術責任者)として残った。

その頃、オフェク・ラヴィアン(Ofek Lavian)がForageにCEOとして参画した。ラヴィアンは元デロイトのコンサルタントで、インスタカートの決済チームを率いた経歴を持つ。彼は、インスタカートの決済グループを5名から50名に拡大し、オンラインデリバリーの提携店がSNAP決済に対応できるようにするプロジェクトを主導した。ラヴィアンはホロコースト生存者の孫で、貧しい家庭で育った。現在29歳のラヴィアンは、SNAPプロジェクトこそが、インスタカートで最も誇れる成果だと言う。

ラヴィアンの指揮下で2022年5月に再スタートを切ったForageは、Eコマース大手Shopifyと提携し、加盟店がSNAP決済に対応できるようにした。Forageは、これまでに食料品のディスカウントサイトFlashfoodや、食料品配達Farmsteadなど、30社と提携している。
次ページ > 「ニッチ市場」の利点

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事