テクノロジー

2022.03.17 07:00

世界最大のNFTプラットフォームを席巻した日本人クリエーターとは?

谷本 有香

デジタルデータによる作品の見た目は、いずれにせよすぐにコピーできる。せっかく作った作品はできるだけ人に見たり聞いたりしてもらいたいのはクリエイターの本当の想いでもあろう。著作権の概念は「勝手に使わせないように守る」から「どんどん使ってもらってその利益をシェアする」と変えていくほうがクリエイターの性分にも合っていて目的合理的だ。

こうして著作権の在り方は大きく変わっていくことが予感される。そもそも転売や利用ごとにオリジナル関係者の収益が自動的に確保できるように設定しておけば、著作権団体を介する必要もない。

もちろんNFTのすべてが今最高なわけではない。まだ小さな新しいマーケットだ。ルールも共通化されているとはいえ脆弱である。実際にはルールを破り、例えば持ち逃げといった事件を起こす人もおり、玉石混交だ。一つのコレクションが簡単に数千万、数億円になる現在の状況は投機的すぎるとの見方もある。しかし、だからこそ優良なプロジェクト同士が国境を越えてつながりあい、このコミュニティを世界的に盛り上げていこうとする動きを大事に育てるのが大切ではないだろうか。

NFTとそれを保証するブロックチェーン技術はさまざまな限界を超えさせてくれる技術である。先ほど挙げた著作権以外にも、絵画のような空間芸術だけでなく、時間芸術が持ち運び可能になることも大きな利点だ。時間芸術とは例えば音楽や舞台などの聴衆とともに時の流れを過ごすことで成立する芸術を指す。

今までは、例えばコンサートなどはその時間が終わってしまえばおしまいで、空間芸術である絵画やアート作品のように、時間を超えて様々な人が作品を所有し、時を経るにつれてその価値が向上していく、という価値向上の仕組みはあり得なかった。日本でアートに比べて、音楽が芸術として脚光を浴びにくかった理由の一つにはこれがあると思っている。有体に言えば、値上がりが期待できないのだ。

しかしNFTはこの限界を打ち破ることができる。というのは、NFTはオリジナルの時間をパッケージ化して、その所有と移転を可能にする手法ともいえるからだ。「あの日のあのコンサートは私のもの」という具合に、時間のパッケージの所有権の売買が時を超えて可能になる。いわば、時間芸術の4次元化である。

今までマーケット性のまったくなかった時間芸術も保有し売買することができる手段が生まれ、アートのマーケットと同じように扱われれば、その可能性は大きく広がるだろうと考えている。そんなこともあってNFT×文化の今後にますます期待をしているのだ。

文=武井涼子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事