経済・社会

2022.02.19 17:00

米政府を悩ませる危険なニュースサイト「ゼロヘッジ」の中身

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米国の情報当局の関係者は2月16日のAP通信の記事で、物議を醸す金融ニュースサイト「ゼロヘッジ(Zero Hedge)」がロシア政府のプロパガンダを広めていると語った。

ゼロヘッジ側は直ちにこれを否定したが、当局はウクライナでの軍事的緊張が高まる中で、ロシアが意図的に誤った情報を流すことで、対立を煽っていると述べている。

ゼロヘッジは、危機を煽る誇張された見方を提示する経済ニュースや、保守的な政治コンテンツが多いことで知られ、陰謀論やロシア寄りの主張を掲載しているとして、以前から物議を醸していた。

CNNは2014年9月の記事で、ゼロヘッジの記事の多くがカルト的人気を誇る映画「ファイト・クラブ」でブラッド・ピットが演じたキャラクターのタイラー・ダーデンと同じ名前の人物によって執筆され、反体制的な意見や悲観的な見方に満ちていると指摘していた。

「ゼロヘッジは、ロシアの国営メディアの記事を再掲載し、彼らの主張を増幅させている」と匿名の情報当局者はAP通信に述べた。ゼロヘッジは複数の記事で、ウクライナに対する米国の姿勢を批判しており、それらの記事には、ロシアの対外諜報庁(SVR)の指揮下にあるとされるSCF(Strategic Culture Foundation)と呼ばれるグループの署名がある。

バイデン政権は昨年、SCFが2020年の米国大統領選挙を妨害したとして、公に非難していた。

ゼロヘッジは、ロシアの情報機関との関係を否定し、AP通信の記事を「奇妙なヒット」と呼んだ。彼らは、SCFが数多くの寄稿者の一つだと説明し、フォーブスへのEメールでのコメントで、「我々は寄稿者をふるいにかけたり論評したりはしない。当サイトの読者は、記事の良し悪しについて自身で判断できる知性を備えている」と述べた。

フォーブスは米国防総省と国務省にコメントを求めている。

ロシアは15日時点でウクライナ周辺に13万人以上の軍隊を駐留させており、米国政府はロシアが数日以内に侵攻を開始する可能性があると警告した。バイデン政権は、プーチン大統領周辺への諜報活動を通じて、ロシアの行動を事前に察知しようしており、今月初めには、ロシアがウクライナ軍からの攻撃をでっち上げることで、侵攻を正当化するかもしれないと述べていた。

一方、AP通信の記事で、ロシア政府とゼロヘッジのつながりを示す決定的な証拠は提示されていない。米国の当局は、十分な証拠を提示せずに、ロシアからの脅威を煽っていると、時おり批判にさらされている。

最近では、ロシアが「ウクライナ軍による攻撃を主張するために動画を捏造した」とされる疑惑に関し、十分な証拠が無いとして、ホワイトハウスの記者たちが国務省を問い詰めていた。

編集=上田 裕資

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