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2015.05.20 08:30

ハリウッドが注目するSNSのビッグデータ活用 専門リサーチ会社も登場

Wavebreak Media Ltd / Bigstock



ここ数年、映画業界はソーシャルメディアでのプロモーション効果に注意を向けている。映画1本の製作予算が2億ドル、宣伝費も同じくらいかかると言われる、市場規模数十億ドルの映画産業で、主演俳優や予告編が、本当にどこまで支持されているかが分かれば、興行収入に大きく貢献することができるだろう。

Fizziologyは、ネット上で収集したテキストに含まれるセンチメント(感情)を分析し、映画製作会社にレポートを提供する企業のひとつだ。

「当社のデータ保管庫には、20億件以上のソーシャルメディアのフィードが保存されています」と語るのは、同社の共同経営者、ベン・カールソン。Fizziologyは、ツイッター、フェイスブック、タンブラー、インスタグラム、そして各種ブログから映画に関連する会話をフォローするソフトウェアを開発している。

Fizziologyには社員12名とフリーのスタッフがいるが、ウェブ上の映画に関するツィートなどのすべてのデータを、スタッフのひとりが専任となり抽出、フィルタリングし、導き出す。それらのデータをレポートとしてまとめ、有料で映画製作会社に提供している。(具体的な料金に関しては、Fizziologyは口を閉ざしている)。

「当社は、2015年に公開される主な映画作品の70%の仕事を請け負う予定です」とカールソンは語る。今年は前年度比20%増の取扱量を見込んでいる。

Fizziologyの事業は当初、映画の予告編がリリースされたらそのリアクションをまとめて映画会社に送るというものだったが、今では、ハリウッドのキャスティングの調査依頼も受けている。特定の俳優の人気が上り坂にあるか、その逆かといったデータの提供だ。それをもとに、映画会社は配役が適切かどうかを判断する。例えば、まだ幼いファン層をもつ俳優をR指定映画に起用するのは、ビジネス上賢明な判断とはいえない。

「エマ・ワトソンは、膨大な数のフォロワーを抱え、どこであろうと彼女が姿を現すとネット上で山のように会話が飛び交う。だからといって、彼女が出ればどんな映画だろうと成功するとは言えないんです」と、カールソンは言う。

レオナルド・ディカプリオやトム・ハンクスのようなスター俳優ですら高い興行収入をもたらす保証がない現在のハリウッドでは、俳優の名声、評価がどのように変化しているかという情報は非常に重要だ。2009年にビジネスをスタートさせてから現在までにFizziologyがモニターした映画は1,000本を超える。この経験に基づき、これから市場に出る作品を過去の同じタイプの作品と比較し、興行成績を予想することができるようになった。また、顧客の希望に応じて最長で1年前からモニターを開始することも可能だという。

同様なビジネスモデルを持つ企業としてはPreActが挙げられる。同社は、ハリウッドの重鎮、ユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)とメディアリサーチ会社Rentrakの合弁でスタートした事業だ。PreActでは、映画に関して交わされる会話の量、センチメント(感情)、性質を示す測定基準を用意し、それぞれの映画に1から100までのスコアをつけている。

「SNSでは、三つの要素が非常に重要なんです。会話の規模—どれだけの人が話題にしているか、センチメントー人々が映画に対していいことを言っているか、そして視聴者から自然に生まれる会話かどうか、関係者やマスコミから流れたものではないってことです」

オーウェン・ウィルソンやアンジェリーナ・ジョリーなどのエージェンシーを務める、UTAのリサーチ部門責任者、デヴィッド・へリンは語った。

PreActは映画が公開される1年前からその作品に関連するソーシャルデータを検証し始め、日々更新されるスコアを顧客に提供している。フェイスブックのコメントから最初の予告編にあまり効果がないとわかったり、ツイッターの情報から特定の俳優の受けが悪いとわかれば、映画会社は予告編を作り直して宣伝体制を練り直し、興行収入を上向きにすることができる。

「一年前から評価を測れるのは大きい。事前に軌道を修正できるのと失敗を覚悟しなければならないのはまったく違う。これで映画を取りまく状況はまったく変わりましたよ」と、PreActの創業に参加したRentrak幹部、スティーブ・バックは話している。

米映画誌『The Hollywood Reporter』によると、映画スタジオのデジタル・マーケティングに対する支出はいまのところまだ1,000万ドル程度だ。しかし、ハリウッドがソーシャルメディアを通じたマーケティングにさらに大金を投じるようになるのは時間の問題だろう。

文=ナタリー・ロベーム(Forbes)/ 編集=遠藤京子

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