ビジネス

2021.09.23 17:00

評価額4兆円突破「Canva」の34歳CEO、資産のほぼ全てを寄付へ

Canva メラニー・パーキンス CEO(c)Canva

ブラウザベースのデザイン支援ツールを開発するオーストラリアのスタートアップ「Canva(キャンバ)」は9月14日、新たに2億ドルを調達し、評価額が400億ドル(約4.4兆円)に到達したことをアナウンスした。これにより、同社は世界で最も価値の高いスタートアップの1社となった。

今回のラウンドは、ティー・ロウ・プライスが主導し、フランクリン・テンプルトンやセコイアキャピタル、ベッセマー・ベンチャーパートナーズ、Greenoaks Capital、Dragoneer、Blackbird、Felicis、AirTreeらが参画した。Canvaの評価額は、今年4月のラウンドで150億ドルとされていた。

Canvaの事業規模は、きわめて稀な水準に達している。同社は、フォーブスが未上場の有望なクラウド企業トップ100社を選出する「Cloud 100」ランキングの2021年版で、決済サービスの「ストライプ」やデータプラットフォームの「データブリックス」に次ぐ3位に入っている。

Canvaは長年黒字を維持しており、2021年の年末までに10億ドル以上の収益を見込んでいる。決算が黒字で、売上高が毎年倍増しているにもかかわらず、なぜ資金調達が必要なのかという疑問に、CEOのメラニー・パーキンス(Melanie Perkins)は「仮に明日、全てを失ったとしても、長期間事業を継続できるだけの資金を保有しておきたいからだ」と答えている。

オーストラリアのパースで設立されたCanvaは、成功したスタートアップとしては珍しく、長年シドニーに本拠を置きつつ、成長を続けている。現在34歳のパーキンスは、フォーブスの「30 UNDER 30」にも選出され、2019年12月号の表紙を飾っていた。

Canvaは、パーキンスと彼女の夫のCliff Obrecht、Cameron Adamsによって2012年に設立され、その翌年に誰でも簡単にデザインが出来るツールをリリースした。

現在、Canvaは動画やプレゼンテーションに対応しており、最近ではリアルタイムのコラボレーション機能を追加した。新しいウェブサイトツールを使うと、履歴書やイベント招待状をPDFで作るのではなく、独自ドメインを持ったレスポンシブなウェブサイトとして公開することが可能になる(Canvaはアドビやビスタプリントの競合製品に位置付けられるが、この新製品によってSquarespaceやWixとも競合することになる)。

Canvaのフリーミアム型ソフトウェアは、もともとアマチュアデザイナー向けのツールだったが、現在の月間ユーザー数は6000万人を超え、アメリカン航空やCBRE、インテル、Zoomなどの大手企業に採用されている。

今回のラウンドで評価額が400億ドルに拡大したことで、各人が会社の18%を保有する創業者のパーキンスと彼女の夫の保有資産は、それぞれ65億ドルに達している。また、9%を保有するAdamsの保有資産も32億ドルに達した。

しかし、パーキンス夫妻は自身の経済的成功には関心がなく、彼らの持分のほぼ全てにあたる会社の30%をCanva財団(Canva Foundation)に寄付し、慈善目的に使う予定だ(2人は合計36%を保有しており、手元に残るのは6%ということになる)。

「私は、ビリオネアと呼ばれることに違和感を覚えている。なぜなら、会社が稼いだ金を自分たちの財産だと考えたことは一度もなく、その管理人に過ぎないと思っているからだ」とパーキンスはブログで述べている。

Canvaは、初めての慈善活動として、1000万ドルを非営利団体のGiveDirectlyに寄付し、アフリカ南部の貧しい家族を支援する。今後は、さらに寄付活動を活発化させる予定だ。

パーキンスは、寄付のインパクトを最大化するための “2ステップ計画”を考案した。第1ステップは、「世界で最も価値の高い企業の1つになり、最善を尽くす」というものだ。パーキンスは、IPOには関心がないという。

第2ステップとして、Canvaは「Pledge 1%(1%の誓い)」と呼ばれる、自社の時間や資金、株式、リソースなどを慈善活動に充てるというムーブメントに参加している。同社は、現在6万の学校と13万の非営利団体と連携している。また、同社は、印刷注文を1件受注するごとに樹木を1本植える活動を行っており、これまでに200万本を植樹している。

「我々は本当に大きな責任を感じている。住んでいる場所や社会経済的地位、スキルや経験に関わらず、世界中の全ての人にデザインする能力を提供していきたい」とパーキンスは語った。

編集=上田裕資

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